「内々に」の正しい読み方は?実は「ないないに」ではない!
日常会話やビジネスのやり取りの中でよく見かける「内々に」という表現。
たとえば「この件は内々にお願いします」などといった使い方を耳にしたことがある人も多いでしょう。
しかし、この「内々に」、読み方を間違えて覚えている人が意外と多いのです。
ネット上でも、「『内々に』って『ないないに』って読むの?」「『うちうちに』ってどういう意味?」という疑問がよく検索されています。
結論から言うと、『内々に』の正しい読み方は『うちうちに』です。
「ないないに」と読むのは誤りです。
なぜ「ないないに」と読まれがちなのか
「内」という漢字を「ない」と読むケースは多くあります。
たとえば「社内(しゃない)」「校内(こうない)」「市内(しない)」など、私たちは普段から「内=ない」と読む場面に慣れています。
そのため、文字で「内々」と書かれていると、つい反射的に「ないない」と読んでしまうのです。
さらに、「内々」という言葉自体が会話よりも文書やメールなどで見かける機会の方が多いため、耳で覚えるよりも目で見て誤読してしまうケースが多いのも理由のひとつです。
特にビジネスシーンでは、丁寧な日本語や少しかたい表現が使われることが多く、「内々に」「内密に」などの言葉もよく登場します。
そうした背景から、「『内々に』=『ないないに』」と思い込んでしまう人が多いのです。
SNSや掲示板などでも「『ないないに』って読みそうになる」「『うちうちに』って知らなかった」という声が多数見られます。
つまり、これは多くの人が一度は間違える、いわば“よくある日本語の落とし穴”なのです。
「うちうちに」が正しいとされる理由
では、なぜ「うちうちに」と読むのが正しいのでしょうか。
ポイントは、「内々」という言葉の構成と意味にあります。
「内」という漢字には、「なか」「うち」という2つの主要な読み方があります。
一般的に、“組織や範囲の中”を指すときは『うち』と読むことが多いのです。
たとえば、「家の内(うち)」「会社の内(うち)」というように、閉じた範囲の中を表現するときに「うち」という読み方が自然です。
「内々」は、この「うち」という言葉を重ねて強調したものです。
つまり、「うちのうち」=「自分たちの中だけ」「限られた範囲の中だけ」という意味になります。
このニュアンスが、「秘密に」「内緒で」という意味につながっているわけです。
一方で、「ないないに」と読んでしまうと、そもそも意味が通じなくなってしまいます。
「ないない」という日本語は、通常は「○○がないない」と否定を繰り返す表現であり、「内々」という熟語としての意味を持ちません。
したがって、「うちうちに」が正しい読み方であり、意味としても自然に通るのです。
さらに、日本語の辞書にも明確に「うちうち」と記載されています。
たとえば『広辞苑 第七版』では、「内々(うちうち)=他人に知られないように。内密に。」と説明されています。
他の国語辞典でも同様に「うちうち」として掲載されており、「ないない」とする辞書は存在しません。
つまり、「うちうちに」が公式に認められた読み方であり、正しい日本語として辞書的にも裏付けられているのです。
ここで、誤読と正しい読み方を整理してみましょう。
表記 | 読み方 | 意味 | 正誤 |
---|---|---|---|
内々に | うちうちに | 内密に、秘密に、非公開で | ◎ 正しい |
内々に | ないないに | (意味をなさない) | × 間違い |
このように、読み方を間違えると意味が崩れてしまうため、正しい発音と意味をセットで覚えておくことが大切です。
特にビジネスメールや上司との会話など、フォーマルな場面で誤読してしまうと、相手に違和感を与えてしまう可能性もあります。
また、「内々に」は文字として読むだけでなく、会話でも使われます。
たとえば、「この話は内々にしておいてください」と言うと、「この件はまだ公表しないで」「関係者の間だけにしておいて」という意味になります。
このように、「内々に」は信頼関係の中で情報を共有する時に使う丁寧な日本語なのです。
つまり、読み方を間違えないようにするだけでなく、「どんな場面で使うか」もセットで覚えておくと、より自然に使いこなせるようになります。
「内々に」の意味とは?日常会話でのニュアンスを解説
「内々に」という言葉を辞書で引くと、たいてい次のように書かれています。
「他人に知られないようにするさま。内密に。」
つまり、簡単に言えば「秘密にしておく」「限られた人だけで共有する」という意味です。
たとえば、上司が「この話はまだ内々にしておいてね」と言った場合、
「まだ他の部署や取引先には知らせないで」「この場の関係者だけにとどめておいてほしい」というニュアンスになります。
このように、「内々に」はまだ公になっていない情報を慎重に扱う時に使われる言葉です。
「内々に」は「内緒に」「非公開で」という意味
「内々に」の基本的な意味は「内緒に」「非公開で」と非常に近いです。
しかし、まったく同じではなく、微妙なニュアンスの違いがあります。
「内緒に」は感情的・日常的な言い回しで、家庭や友人関係など、親しい関係での秘密を示すことが多いです。
一方で「内々に」は、どちらかというとビジネスやフォーマルな場面での“控えめな配慮”を表します。
たとえば、
- 「この件はまだ内々にお願いします」→上司や同僚など職場内で使う
- 「この話は内緒にしてね」→友人や家族との会話で使う
同じ「秘密にする」でも、前者は礼儀や信頼を前提とした控えめな言い方で、後者は親しみを込めた日常語です。
つまり、「内々に」は「相手を立てつつ、やんわりと秘密を共有する」ような上品な表現なのです。
ビジネスや日常会話での使われ方
ビジネスシーンでは、「内々に」はとても便利な言葉です。
たとえば、まだ発表前の企画や、未確定の人事情報などを扱うとき、直接「秘密にしてください」と言うと少しきつい印象になりますよね。
そんなときに「この件は内々にお願いします」と言うことで、角を立てずに情報を制限することができます。
また、社外の関係者に対しても「この件はまだ社内で内々に進めております」という言い方をすれば、
「正式な発表前ですが、水面下で準備しています」という意味をやわらかく伝えることができます。
このように、「内々に」は日本語特有の“空気を読む”文化に合った表現です。
「隠す」というよりも「控える」「時期を待つ」といった、穏やかで丁寧な印象を与えるのです。
ここで、よく使われる「内々に」の表現例をいくつか挙げてみましょう。
使用例 | 意味・ニュアンス |
---|---|
この件は内々に進めてください。 | 正式に公表する前に、限られた範囲で進めてほしい。 |
内々に相談を受けていました。 | 公にはしていないが、個人的に話を聞いていた。 |
内々に内定を伝える。 | 公式発表の前に、関係者だけに知らせる。 |
内々に了承を得た。 | 公にはしていないが、非公式に同意を得た。 |
このように、「内々に」は単に「秘密にする」だけでなく、まだタイミングではない情報をそっと扱う表現として使われます。
また、相手への信頼を前提として使われることも多く、「あなたなら信頼して話せる」という意味合いを含むこともあります。
もうひとつ大事な点は、「内々に」は悪い意味の隠し事ではないということです。
たとえば、「内々に取引していた」「内々に話をつけた」などと聞くと、少し不正っぽい印象を持つ人もいますが、実際はそうではありません。
日本語としての「内々に」は「正式な発表前」「時期尚早だから控える」という前向きな使い方が主流です。
このニュアンスの違いを整理してみましょう。
表現 | 意味 | 印象 |
---|---|---|
内々に | 限られた範囲で控えめに行う | フォーマル・丁寧・信頼感 |
内緒に | 個人的に秘密にする | カジュアル・親しみ |
こっそり | 人に気づかれないように行動する | くだけた・子どもっぽい |
このように、「内々に」は日本語の中でも相手への配慮を感じさせる大人の言葉です。
だからこそ、ビジネスシーンや改まった会話で自然に使えると、言葉遣いに深みが出ます。
まとめると、「内々に」という言葉には次の3つのポイントがあります。
- 意味は「内密に」「非公開で」「他人に知られないように」
- フォーマルな場面での柔らかい「秘密」表現
- 相手への信頼や配慮を前提とした日本語らしい丁寧さ
このようなニュアンスを理解しておくと、「内々にお願いします」という言葉を自然に使いこなせるようになります。
また、「うちうちに」という読み方も、こうした温かみのある人間関係を前提とした言葉であることがわかります。
「内々に」を使った例文集:自然な使い方をマスターしよう
「内々に」という言葉を正しく理解できたら、次に大切なのは使い方を身につけることです。
意味を知っていても、どんな場面で使えば自然なのかが分からないと、実際の会話やメールでは使いづらいですよね。
ここでは、フォーマルなビジネスシーンと、ややくだけた日常会話シーンに分けて、「内々に」の使い方を例文で解説します。
フォーマルな場面での「内々に」の使い方
ビジネスの世界では、「内々に」は頻繁に登場します。
特に、まだ正式発表されていない事柄や、慎重に扱うべき情報を共有するときによく使われます。
この表現を上手に使えると、言葉遣いに「信頼感」や「品の良さ」が出ます。
以下は、ビジネスや公式な文書・会話の中で使える自然な例文です。
シーン | 例文 | 意味・補足 |
---|---|---|
社内の打ち合わせで | この件は、しばらく内々に進めてください。 | まだ外部に公表できない段階で、社内の一部だけで進行させたい時に使う。 |
人事関連の話題で | 異動の件は、正式発表まで内々にお願いします。 | 人事情報など、発表前のデリケートな情報共有に最適。 |
社外への伝達時 | 現時点では、社内で内々に調整しております。 | 「まだ確定ではない」「水面下で進めている」という柔らかい表現。 |
上司とのやり取り | 内々に承知いたしました。 | 「非公式に理解しました」という意味。丁寧で控えめな印象を与える。 |
採用・内定に関して | 候補者の方には、内々に内定をお伝えしました。 | 「正式発表前の非公式通知」を丁寧に表現できる。 |
ビジネスでは、上記のように「内々に」は「まだ公にはできない段階」を表す便利な言葉です。
特に、“相手への信頼を示しつつ、情報を限定する”という点で、日本語の礼儀文化にとても合っています。
また、社内メールでもよく使われます。
以下は、メール文面の中で自然に使える例です。
件名:今後の方針について(内々のご連絡)
〇〇部 各位
現在進行中のプロジェクトに関して、内々に共有いたします。
正式な発表はまだ先となりますが、現時点での方針をお伝えいたします。ご確認のうえ、社外にはお控えいただきますようお願いいたします。
このように、「内々に」はビジネス文書の中でも非常に便利で、角の立たない表現として重宝されます。
カジュアルな会話での「内々に」の使い方
「内々に」はフォーマルな印象が強い言葉ですが、日常会話でも使うことができます。
ただし、友人や家族との会話の中では、少しだけトーンをやわらげて使うと自然です。
たとえば、次のような場面で登場します。
シーン | 例文 | 意味・ニュアンス |
---|---|---|
友人同士の会話 | あの話、まだ内々にしておいてね。 | 「まだ他の人には言わないでね」というやわらかい注意。 |
家族間での話 | 内々に決めておこうか。 | 「二人だけの間で決めよう」という親密な印象。 |
恋人との会話 | この計画は内々に進めよう。 | 「サプライズ的に進めたい」というワクワクした使い方。 |
趣味仲間との会話 | 来月のイベント、まだ内々の話だけどね。 | 「正式発表前の情報だよ」という軽いトーン。 |
このように、カジュアルな会話では「内々に」は“まだ話すには早い話題”を控えめに伝える時に使われます。
決して固い言葉ではなく、「秘密」というよりも「共有を限定する」優しい言葉なのです。
日常会話で使うときは、語尾をやわらげるとより自然です。
たとえば、
- 「内々にしておこうか」
- 「内々で話してるだけだけど」
- 「内々の話なんだけどね」
このように使えば、親しい関係でも違和感なく伝えることができます。
特に「内々の話なんだけどね」は、会話の導入として非常に自然で、聞く側にも「これはまだ非公式なんだな」と伝わります。
ここで、「内々に」を使うときに注意しておきたいポイントもまとめておきましょう。
- あくまで「信頼関係の中で使う言葉」であり、相手を選ぶ。
- 「秘密」「隠ぺい」などネガティブな場面では使わない方が良い。
- フォーマルでもカジュアルでも、言い方次第で柔らかく表現できる。
つまり、「内々に」という言葉は、単なる“秘密”を意味するのではなく、“信頼と配慮”を伴う控えめな表現なのです。
相手との関係性を考えながら使うと、とても上品で印象の良い日本語になります。
実際、「内々に」は日本語検定などでも取り上げられることがあり、「丁寧な大人の表現」として評価される言葉です。
正しい読み方と意味を理解した上で、こうした例文を参考に使い分けていけば、ビジネスでも日常でも自然に使いこなせるようになります。
「内々に」と似た意味の表現:言い換え・類語まとめ
「内々に」という言葉は、日本語の中でも「秘密に」「非公開で」「こっそり」といった意味を持つ表現のひとつです。
ただし、「内々に」と似た言葉はたくさんあり、それぞれ微妙にニュアンスが異なります。
ここでは、「内密に」「非公式に」「ひそかに」「水面下で」など、よく使われる言い換え表現を詳しく見ていきましょう。
「内密に」:もっとも近いフォーマルな表現
「内密に」は、「内々に」とほぼ同じ意味で使える表現です。
読み方は「ないみつに」で、漢字の通り「内(うち)の密(ひそか)」=「内々でひそかに行う」という意味です。
そのため、ビジネスシーンでは「内々に」と入れ替えても自然に使える場合が多いです。
たとえば、
- この件は内密にお願いします。
- 内密にお話ししたいことがあります。
どちらも「他人に知られないように」という意味で、丁寧で信頼を示す表現です。
ただし、「内密に」はややかたい印象があり、上司や取引先など目上の相手に使うときにより適しています。
一方で「内々に」は、少し柔らかく、社内や親しい関係での会話にも自然に使えるのが特徴です。
表現 | 読み方 | 意味 | 印象 |
---|---|---|---|
内々に | うちうちに | 限られた範囲で内密に | 柔らかく自然 |
内密に | ないみつに | 他人に知られないように | フォーマル・厳密 |
「非公式に」:公的でないことを示す言葉
「非公式に」は、「正式な発表ではない」というニュアンスを強く持つ言葉です。
「内々に」が人間関係の中での信頼や配慮を含むのに対して、「非公式に」はより事実的・客観的な表現です。
たとえば、
- 非公式に打診があった。
- 非公式に会談を行った。
このように、「非公式に」は政治・ビジネス・報道などでよく使われ、“公的手続きではないが、動いている事実がある”という意味になります。
一方、「内々に」はもっと人間味のある、信頼を前提とした表現です。
つまり、「非公式に」は客観的、「内々に」は主観的・人間的という違いがあります。
「ひそかに」:感情のこもった控えめな表現
「ひそかに」は、「人に気づかれないように」という意味の副詞で、感情や心の内を表す場面でよく使われます。
たとえば、
- 彼の成功をひそかに喜んだ。
- ひそかに準備を進めていた。
このように、「ひそかに」は心情や行動を控えめに表す柔らかい表現であり、「内々に」とは少し使う場面が異なります。
どちらかといえば「自分の中でこっそりと」「誰にも気づかれずに」というニュアンスが強くなります。
表現 | 使う場面 | 特徴 |
---|---|---|
内々に | ビジネスや会話での控えめな情報共有 | 人との信頼関係を前提に使う |
ひそかに | 個人的な感情・行動を控えめに表す | 自分の内面や思いを含む |
「水面下で」:動きはあるが表には出さない表現
「水面下で」は、比喩的な表現で、「表には見えないところで動いている」という意味です。
ニュースや報道などで「水面下で交渉が続いている」といった形で使われます。
- 水面下で調整が進められている。
- 水面下で話をまとめている段階です。
「内々に」との違いは、「水面下で」は行動そのものに焦点があるのに対して、「内々に」は情報の扱いに焦点があるという点です。
つまり、「水面下で」は「動いていることを外に見せない」、
「内々に」は「情報を特定の人にだけ共有する」という違いがあります。
「内々で」:少しくだけた同義表現
「内々で」は、「内々に」とほぼ同じ意味ですが、やや口語的な表現です。
日常会話やメールの中で、「に」を省略して「内々で話しておきます」「内々で進めましょう」と使われることがあります。
- この件は、内々で調整します。
- 内々で了承を得ました。
ビジネスの中でも、社内や親しい関係の中では「内々に」よりも自然に聞こえる場合があります。
ただし、公式文書などでは「内々に」を使う方が適切です。
シーン別!「内々に」と類語の使い分け早見表
最後に、シーンごとの使い分けをわかりやすくまとめた表を紹介します。
シーン | おすすめ表現 | 理由・特徴 |
---|---|---|
社内でまだ発表していない案件 | 内々に | 柔らかく控えめに伝えられる。信頼を感じさせる。 |
上司や取引先への正式な報告 | 内密に | フォーマルかつ敬意を保った言い方。 |
政治・報道などでの非公式な行動 | 非公式に | 客観的で事実的なニュアンス。 |
自分だけで行動を起こす時 | ひそかに | 感情的・個人的な表現。内面を描くときに。 |
準備中の計画をこっそり進める時 | 水面下で | 動きがあることを暗示。組織的な使い方。 |
このように、どの言葉も「表に出さない」「控えめに進める」という共通点を持ちますが、
フォーマル度・感情の強さ・関係性の深さによって使い分けると、より自然で上品な日本語になります。
特にビジネスの場では、「内々に」「内密に」「非公式に」が使いやすい三大表現です。
状況や相手との関係に応じて、うまく選んで使い分けることが日本語上級者のポイントです。
「内々に」はどんな時に使うべき?注意点とマナー
「内々に」という言葉は便利ですが、どんな場面でも使えるわけではありません。
使うタイミングや相手を間違えると、かえって誤解を招いてしまうこともあります。
ここでは、「どんな時に使うのが自然か」「どういう使い方を避けるべきか」を分かりやすく解説します。
ビジネスメールで使うときの注意点
「内々に」はビジネスメールでもよく使われますが、文脈によっては「秘密裏に動いている」ような印象を与える場合があります。
そのため、使うときは「あくまで正式発表前」「調整段階」などの文脈を明示することが大切です。
たとえば、次のような表現は自然で好印象です。
- 「この件は現在、内々に調整中です。」
- 「まだ正式決定ではありませんので、内々の情報として共有いたします。」
逆に、次のような書き方は避けた方が良いでしょう。
- 「上司には内々に進めています。」
- 「取引先には内々に伝えておきました。」
これらの言い方は、「関係者を通さず、独断で動いている」という印象を与えかねません。
「内々に」はあくまで組織やチーム内で共有する控えめな表現として使うことがポイントです。
「内々に」を使うのが適切な場面
では、具体的に「内々に」を使うのが適切な場面とはどんな時でしょうか?
以下のような状況であれば、自然で丁寧な印象になります。
場面 | 使い方の例 | 解説 |
---|---|---|
社内の企画がまだ非公開の段階 | 「この企画は、内々に進めています。」 | 正式発表前に限られたメンバーだけで動いていることを示す。 |
人事・昇進の情報共有 | 「異動の件は、正式発表まで内々でお願いします。」 | デリケートな情報を慎重に扱うときの表現。 |
社外との調整を控えている段階 | 「現時点では、内々の検討段階です。」 | まだ確定していない状況をやわらかく伝える。 |
プロジェクトの進行を非公開で進めたい時 | 「内々に試作段階まで進んでいます。」 | 慎重に進めている姿勢を伝える丁寧な表現。 |
これらの例に共通しているのは、「まだ外部に知らせる段階ではない」という前提がある点です。
つまり、「内々に」は“正式発表前”や“調整中”を穏やかに表す便利な言葉なのです。
誤用を避けるためのポイント
「内々に」は使い方によっては、誤解を招くことがあります。
たとえば、次のような表現は避けた方が無難です。
- 「社長に内々で報告しました」 → 上司を飛ばした印象になる
- 「内々に契約を進めました」 → 不透明な手続きに見える
- 「内々にお金を動かしました」 → 不正を連想させる
このように、「内々に」は状況によっては“裏でこっそりやった”という悪いイメージを持たれる可能性もあります。
そのため、使うときは必ず「誰と」「何について」「どんな目的で」という背景を添えるのがマナーです。
たとえば、
- 「関係部署内で内々に確認を取りました」→ ✅ 正しい使い方
- 「個人的に内々で動きました」→ ❌ 誤解を招く可能性あり
このように、公私の線引きを明確にすることで、「内々に」は上品で誠実な印象を保てます。
フォーマルな会話でのマナー
フォーマルな会話(会議・商談・報告など)では、「内々に」は非常に便利な表現ですが、言い方によって印象が大きく変わります。
次のようなポイントを意識して使うと、より自然で丁寧に伝わります。
- 「まだ正式ではない」という前置きをつける。
- 「内々に」→「内々の段階で」など、少し柔らかく言い換える。
- 相手を信頼しているニュアンスを添える。
たとえば、次のような言い方が好印象です。
- 「まだ内々の話ではありますが、ご相談させてください。」
- 「内々の段階ではありますが、方針としては前向きです。」
このように言うことで、「隠している」のではなく「まだ確定していない」という前向きな印象を与えることができます。
プライベートで使うときのマナー
日常会話で「内々に」を使う場合は、言葉の響きがややフォーマルなため、親しい人に使うときは少しやわらげると自然です。
たとえば、
- 「まだ内々の話だけどね」
- 「内々で決めておこうか」
といったように、少しくだけた形で使えば、「信頼して話している感じ」や「まだ秘密だよ」という温かみのあるニュアンスになります。
まとめ:マナーを守れば上品で信頼される言葉
「内々に」は、使うタイミングと相手を選べば、とても上品で便利な表現です。
以下の3つのポイントを意識すると、誤解なく自然に使うことができます。
- “まだ公表できない情報”に使う。
- 信頼関係のある相手に対して使う。
- 文脈で「目的」や「状況」を明示する。
これらを守れば、「内々に」という言葉は、単なる「秘密」ではなく、
相手への配慮や礼儀を感じさせる日本語表現として、あなたの印象をより良くしてくれます。
【豆知識】「内々に」の由来と日本語としての背景
「内々に(うちうちに)」という言葉は、実はとても日本的な表現です。
同じ「秘密に」「内密に」といった言葉があっても、「内々に」には特有の“温度”があります。
それは、日本人の「和を重んじる文化」や「遠回しのコミュニケーション」が深く関係しています。
「内」という言葉の意味から生まれた表現
まず、「内々に」の語源を理解するには、「内(うち)」という言葉の意味を見ておく必要があります。
日本語の「内(うち)」には、単に「内側」という意味だけでなく、もっと広く、「自分の範囲」「仲間」「心の中」といった意味も含まれています。
たとえば、「うちの家族」「うちの会社」「うちの子」といった言い方をしますよね。
この「うち」は単に場所を指すのではなく、「自分に近い関係」「信頼関係のある人たち」を表しています。
つまり、「内(うち)」という言葉自体が「関係性」や「距離感」を示す柔らかい言葉なのです。
そして「内々(うちうち)」とは、その「うち」を重ねて強調した形。
つまり、「私たちの中の中」「ごく限られた範囲だけ」という意味になります。
これが転じて、「他人には知らせず、特定の関係者だけで共有する」という意味になりました。
言い換えると、「内々に」は単なる“秘密”ではなく、「信頼関係の中での共有」を表す言葉なのです。
昔の日本語における「内々」の使われ方
「内々」という表現は、実はかなり古くから日本語に存在しています。
江戸時代の文書や古典文学にも「内々に申し上げます」「内々に伝えました」といった表現がすでに見られます。
たとえば、江戸時代の武家社会では、身分の上下関係や礼儀がとても重視されていました。
その中で、何か重要な話をする時に「公(おおやけ)」の場ではなく、「内(うち)」=限られた場で話すことがありました。
これを「内々に申し上げる」と表現したのです。
つまり、「内々に」は当初から「公の手前では控える」「限られた範囲だけで話す」という意味で使われていたことがわかります。
現代の「まだ発表前なので内々にお願いします」という使い方と、ほとんど同じ感覚ですね。
さらに、明治~昭和初期にかけての文書にも「内々にお伝えいたします」「内々に承知いたしました」といった表現が数多く見られます。
この時代は特に「表(おもて)」と「裏(うら)」、「公(おおやけ)」と「私(わたくし)」の区別を重んじる文化が強く、
「内々に」という言葉が自然に根づいた背景があります。
「内々に」と「日本人の人間関係文化」
「内々に」という言葉が今でもよく使われる理由は、日本語の“人と人との距離の取り方”と深く関係しています。
日本社会では、「相手を立てる」「波風を立てない」「控えめに伝える」といった姿勢が大切にされます。
そのため、「ストレートに断る」よりも、「今のところ内々で…」というように、やんわりと伝える表現が重宝されるのです。
この文化的背景から、「内々に」は単なる秘密ではなく、礼儀や配慮をもって情報を扱う表現として定着しました。
特にビジネス社会では、「まだ公式ではありませんが」「関係者の間だけで共有」というような言い方が多く、
そこに「うちうち」という日本的な距離感が自然に組み込まれています。
たとえば次のような例文に、その文化的なやわらかさが表れています。
- 「この話はまだ内々の段階なので、ご配慮をお願いいたします。」
- 「内々にご相談させていただきたいことがございます。」
どちらも、「あなたを信頼して話しています」「まだ外には出せません」という丁寧な気持ちを同時に伝えています。
つまり、「内々に」は日本人が得意とする“直接言わないやさしさ”を体現した表現なのです。
「内々に」と「公(おおやけ)」の対比
日本語では、「内(うち)」と対になる言葉として「外(そと)」や「公(おおやけ)」があります。
たとえば「内輪(うちわ)」「内向的」などが「内」的な言葉にあたり、
「外交」「公表」などが「外」や「公」を意識した言葉です。
この「内」と「公」の対比は、日本人の社会観にも深く根づいています。
人前(公)では控えめに、信頼できる人の前(内)では本音を話す。
その中間に位置する表現が、「内々に」なのです。
つまり、「内々に」は“公と私の間を上品に行き来する言葉”とも言えます。
だからこそ、ビジネスでも日常でも、場面を選ばず自然に使えるのです。
「内々に」という言葉が今も残る理由
現代ではメールやチャットなどでのコミュニケーションが主流になり、
直接会って話す機会が減っています。
しかしその中でも、「内々にお願いします」「内々の話ですが」という表現が今も生き続けているのは、
この言葉が持つ“距離のやさしさ”が現代社会でも必要とされているからです。
SNSなどで何でも公開される時代だからこそ、
「内々に」という言葉には“静かに共有する”という奥ゆかしさがあります。
そしてそれが、今なお日本語の美しさとして受け継がれているのです。
つまり、「内々に」は単に古い表現ではなく、
日本人の心のあり方を映す現代的な言葉でもあるのです。
よくある質問(FAQ):「内々に」に関する疑問まとめ
最後に、「内々に」という言葉について多くの人が気になるポイントを、質問形式でまとめました。
実際に検索されている疑問を中心に、ひとつずつ丁寧に答えていきます。
Q1:「内々に」の正しい読み方は?
A. 「内々に」は「うちうちに」と読みます。
「ないないに」と読むのは誤りです。
「内(うち)」という漢字には「なか」「うち」の二つの読み方がありますが、
この場合は「内(うち)」を重ねることで「自分たちの中で」「内側だけで」という意味になります。
つまり、「内々に」は「ごく限られた範囲で」「他人に知られないように」という意味の日本語です。
辞書(広辞苑・大辞林など)でも、すべて「うちうち」として掲載されています。
Q2:「内々にお願いします」とはどういう意味?
A. 「内々にお願いします」は、「この話はまだ公にしないでください」という意味です。
たとえば上司が「この件は内々にお願いします」と言った場合、
「まだ正式発表前なので他の人には言わないでください」というニュアンスになります。
直接的に「秘密にして」と言うよりも柔らかく、丁寧な印象を与える表現です。
ビジネスメールでもよく使われますが、信頼関係を前提にした控えめな言い方だと覚えておくと良いでしょう。
Q3:「内々に」と「内密に」の違いは?
A. 「内々に」と「内密に」は、似ていますがニュアンスが少し異なります。
どちらも「他人に知られないようにする」という意味を持ちますが、
「内々に」は人間関係の中でのやわらかい秘密を示し、
「内密に」は公的で厳格な秘密を示します。
表現 | 意味 | 印象 |
---|---|---|
内々に | 信頼関係の中で内密にする | 柔らかく自然。ビジネス・日常どちらにも使える。 |
内密に | 他人に知られないように厳重に扱う | フォーマル・堅めの印象。公的文書向き。 |
たとえば、「内密に進めてください」はフォーマルで重い印象、
「内々に進めてください」は柔らかく自然な言い回しになります。
Q4:「内々に」と「非公式に」は同じ意味?
A. 似ていますが、使う文脈が違います。
「非公式に」は「正式な発表・手続きではない」という意味を持ち、
客観的・事実的な表現です。
一方、「内々に」は「特定の人だけが知っている状態」を指し、
より人間関係に重きを置いた言葉です。
たとえば、
「非公式に会談を行った」→形式をとらない、公式発表していない。
「内々に相談を受けた」→限られた範囲の中で、信頼関係をもって話を聞いた。
という違いになります。
Q5:「内々に」は悪い意味で使われることもある?
A. 基本的には悪い意味ではありません。
ただし、使い方によっては「裏でこっそり」「不正に進めている」という印象を与えてしまうこともあります。
そのため、文脈をしっかり添えるのが大切です。
たとえば、
❌「内々に契約を進めた」→不透明に感じられる。
✅「関係部署内で内々に調整しています」→自然で丁寧。
このように、誰とどんな目的で行っているかを明確にするだけで印象が変わります。
Q6:「内々で」と「内々に」の違いはある?
A. 意味はほとんど同じですが、使い方の場面に違いがあります。
「内々に」は少しフォーマルで文章的、
「内々で」は口語的で会話でよく使われます。
- 「この件は内々にお願いします。」(ビジネスメール・報告書など)
- 「内々で話しておくね。」(会話・口頭でのやり取り)
つまり、文書では「内々に」、会話では「内々で」を使うと自然です。
Q7:「内々に」という言葉は今でも使うの?古い印象にならない?
A. 現在でもよく使われています。
特にビジネスや行政文書など、フォーマルな場では今も現役の表現です。
むしろ、「内々にお願いします」「内々に進めております」といった言い回しは、
柔らかく丁寧な日本語として好まれています。
たとえばSNSやチャットなどカジュアルな場では「まだ公表してないんだけど」などの言い方も増えていますが、
ビジネスでは「内々に」が一番バランスの良い表現です。
Q8:「内々に」と「こっそり」の違いは?
A. 「こっそり」は少し子どもっぽく、軽いニュアンスがあります。
「内々に」は大人が使う丁寧で上品な表現です。
表現 | 意味 | 印象 |
---|---|---|
内々に | 信頼できる人だけで、慎重に行う | 丁寧・控えめ・フォーマル |
こっそり | 人に気づかれないように行動する | カジュアル・子どもっぽい |
たとえば、「こっそり準備した」と言うと可愛らしい印象ですが、
「内々に準備を進めた」と言えば大人らしく、信頼感のある表現になります。
Q9:「内々に」はどんな言葉と一緒に使うのが自然?
A. 「内々に」は、次のような動詞と相性が良いです。
- 内々に進める
- 内々に話す
- 内々に相談する
- 内々に伝える
- 内々に了承を得る
- 内々にお願いする
このように、「情報の共有」や「進行」に関わる動詞と組み合わせると、
とても自然でビジネス日本語らしい表現になります。
Q10:「内々に」を英語で言うと?
A. 完全に同じ意味を持つ英語はありませんが、
文脈に応じて次のように訳すことができます。
英語表現 | ニュアンス |
---|---|
confidentially | 内密に、秘密として(フォーマル) |
behind the scenes | 水面下で、裏で |
informally | 非公式に |
within our circle | 私たちの間で(親しい間柄で) |
たとえば、「この話は内々にお願いします」は、
英語では「Please keep this confidential.」や「Let’s keep this between us.」と訳せます。
つまり、「内々に」は日本語ならではの文化的な表現ですが、英語でも状況に合わせて伝えることが可能です。
このように、「内々に」は一見シンプルな言葉ですが、使い方や相手によって意味の深さが変わります。
適切な場面で丁寧に使うことで、信頼される印象を与える便利な日本語になります。