結論:「全国」は“日本全体”を表す言葉で、昔の「国」の名残
子どもから「なんで“全国”っていうの?日本って“国”はひとつだけじゃないの?」と聞かれると、ちょっと答えに困りますよね。
でもこの疑問、実はとても良い質問なんです。なぜなら、「全国」という言葉には、日本の歴史の名残と、言葉の意味の変化がぎゅっと詰まっているからです。
結論から言うと、「全国」という言葉は、“日本全体”を表す言葉であり、同時に昔の「国(くに)」という地方区分の名残なんです。
つまり「全国」とは、「昔の日本を構成していたすべての“国”」という意味が、時代を超えて残っている表現なんですね。
「全国」は「日本のすべての地域」という意味
まず、現在使われている「全国」という言葉の意味を整理してみましょう。
国語辞典などを引くと、だいたい次のように書かれています。
全国(ぜんこく):その国全体。国のすべての地域。
(例:「全国のニュース」「全国の小学生」「全国大会」など)
つまり「全国」とは、「ある国のすべての地域」を指す言葉です。
ここでポイントなのは、「国全体」といっても、実際にはその国の内部にある地方や都道府県を含むということです。
たとえば「全国ニュース」と言えば、北海道から沖縄まで日本のすべての地域に関係するニュースのことを指しますよね。
この場合の「全国」は「日本全体」という意味であって、都道府県ひとつひとつを「国」として見ているわけではありません。
しかし、「全国」という言葉がなぜ「国全体」という意味になったのかをたどっていくと、そこには昔の日本の地理の考え方が関係しています。
昔の日本では「国(くに)」が地方を指す言葉だった
実は、日本の歴史をさかのぼると、今の「都道府県」にあたる区分は「国(くに)」と呼ばれていました。
たとえば奈良時代から江戸時代まで、日本の土地は「〇〇国(くに)」という単位で分けられていたのです。
たとえば:
- 山城国(今の京都府南部)
- 摂津国(今の大阪・兵庫の一部)
- 武蔵国(今の東京都・埼玉県あたり)
- 出雲国(今の島根県東部)
このように、昔の「国(くに)」は今でいう都道府県のような地方の単位だったのです。
つまり当時の人にとって「国」は、今の「県」や「地方」のような意味だったんですね。
そのため、「全国」という言葉のもともとの意味は、“すべての国(くに)=日本のすべての地域”ということになります。
これが、私たちが今「全国」と言うときの根っこにある考え方なんです。
では、なぜ今のように「都道府県」という呼び方に変わったのに、「全国」という言葉だけが残ったのでしょうか?
それには、明治時代の行政改革が関係しています。
このあと見ていくように、「全国」という言葉は単なる「古い言葉」ではなく、日本の成り立ちや歴史が言葉の形として今も残っている、とても面白い例なんです。
ちなみに、「全国」という表現は日本だけでなく、中国や韓国などの漢字文化圏でも使われています。
これは、漢字の「国(國)」という文字が昔から「領土」「地域」「土地全体」を意味していたためです。
つまり、「全国」という言葉は、漢字文化の中で「ある国のすべての地域」を指す便利な表現として根付いたわけです。
このように考えると、「全国」という言葉は、単に「日本じゅう」という意味を持つだけでなく、古代から続く日本語と漢字文化の融合の結果だとも言えますね。
まとめると、「全国」という言葉には次のような二つの意味が同時に存在しています。
| 意味の側面 | 説明 |
|---|---|
| 現代的な意味 | 「日本のすべての地域」「国全体」を表す言葉。 |
| 歴史的な由来 | 昔の「国(くに)」という地方単位の名残。すべての国=全国。 |
このように、「全国」は単に地理的な範囲を示すだけでなく、日本の歴史とことばの進化を感じさせる言葉なんです。
では次に、もう少し詳しく「なぜ都道府県をまとめて『全国』と呼ぶようになったのか」について見ていきましょう。
なぜ都道府県をまとめて「全国」と呼ぶようになったのか
「全国」という言葉が「昔の『国(くに)』の名残」だという話を聞くと、こう思う人もいるでしょう。
「でも今は『都道府県』になってるのに、どうして“全国”って言い方が残ったの?」と。
実はこの疑問の答えは、明治時代の大改革にあります。
日本の土地の区分のしかたが変わったときに、言葉だけが昔のまま残った――それが「全国」という表現の理由なんです。
日本は昔、たくさんの「国(くに)」でできていた
まず、明治時代の前、日本は「国(くに)」という単位で分けられていました。
たとえば「摂津国(せっつのくに)」「美濃国(みののくに)」「備前国(びぜんのくに)」など、全国には60以上の「国」があったのです。
この「国」は、いまの「県」や「地方自治体」のような存在で、江戸時代までは藩(はん)や大名がそれぞれの国を治めていました。
つまり昔の人にとって「国」とは、自分の住んでいる地域のことだったんです。
ですから、当時「全国」と言えば、「日本中のすべての国(くに)」を意味していました。
「国(くに)」という言葉がそのまま地名の単位として使われていたため、「全国=すべての国々(地域)」という言葉が自然に生まれたのです。
たとえば「全国の神社」や「全国の人々」という表現は、当時から「日本中すべての地域」という意味で使われていました。
この考え方が、今の日本語にも受け継がれているのです。
明治時代に「国」から「都道府県」に変わっても言葉が残った
明治維新(1868年)のあと、日本政府は西洋のように中央集権の国をつくろうとしました。
そのとき、昔の「国(くに)」や「藩(はん)」をなくして、「府」「県」という新しい単位に変えたのです。
これが「廃藩置県(はいはんちけん)」と呼ばれる改革です。
しかし、制度が変わっても、言葉はすぐには変わりません。
人々は長年使い慣れた「全国」という言葉を、そのまま使い続けました。
「国」という言葉が行政区分としてはなくなっても、「日本のすべての地域」という意味の表現として生き残ったのです。
たとえば、新聞や教科書の中でも明治のころから「全国ニュース」「全国大会」「全国的に広がる」などという言い方が使われています。
これは、昔の「国」の概念を引きずった言葉づかいですが、同時に「日本中すべて」という意味として定着していったのです。
つまり、「全国」という言葉は、言葉の伝統と文化の名残でもあります。
明治以降の日本語の中で、「国」は行政単位ではなくなりましたが、心の中の地理感覚としては残っていたのです。
このようにして、「全国」は「都道府県すべて」という意味を持ちながらも、「昔の日本の姿を感じさせる言葉」として現在まで使われています。
「全国」という言葉が便利だったから残った
もう一つの理由は、とても実用的なものです。
「全国」という言葉は短く、しかも誰が聞いても範囲が分かりやすい。
つまり使いやすくて便利だったのです。
たとえば、「日本中のすべての都道府県」と言うと長くて言いづらいですよね。
でも「全国」ならたった二文字で、意味がすぐ伝わります。
この「簡単で分かりやすい」言葉ほど、時代を超えて生き残りやすいのです。
さらに、「全国」という言葉は「全」「国」という二つの漢字の組み合わせで、範囲の広さとまとまりを自然に感じさせます。
「全国大会」「全国ニュース」「全国版」など、どれも「日本全体で」「すべてを含む」という印象を与える便利な言葉です。
このように、言葉が生き残る理由は“便利さ”にもあるのです。
人は、意味が分かりやすく、口にしやすい言葉を好んで使い続けます。
それが「全国」という言葉が現代まで残ったもう一つの理由です。
「全国」は文化として残った“ことばの遺跡”
「全国」という言葉は、言ってみればことばの遺跡のようなものです。
意味は少しずつ変わっても、形は昔のまま残っている。
私たちはふだん何気なく使っていますが、実は千年以上の歴史を背負った言葉なんですね。
日本語にはこのように、昔の制度や文化の名残を残す言葉がたくさんあります。
たとえば:
- 「官庁」…昔の「官(つかさ)」の名残
- 「郡(ぐん)」…古代の地方行政区分の名残
- 「府中」…もともと「国府(こくふ)」があった場所
「全国」もその一つで、かつての「国(くに)」の名残を、今も私たちが日常で使っている言葉なんです。
つまり、「全国」という表現を使うたびに、私たちは知らず知らずのうちに、古代から続く日本の地理と言葉の歴史を受け継いでいることになります。
このように見ていくと、「全国」という言葉はただの地理的な範囲を示す言葉ではなく、日本の文化を伝える小さな“生きた化石”のような存在だとも言えるのです。
では、次の章では、この「国(くに)」という言葉そのものの意味が、どのように時代によって変わっていったのかを見てみましょう。
「国」という言葉の意味はどう変わってきたのか
「全国」という言葉が昔の「国(くに)」に由来していることは分かりました。
ではその「国」という言葉そのものは、いつからどんな意味で使われてきたのでしょうか?
実は「国」という言葉は、日本の歴史の中で少しずつ意味が変化してきたのです。
今では「国」と言えば「日本国」や「アメリカ合衆国」のように、ひとつの国家を指しますよね。
でも昔の日本では、「国」とは地方のまとまりのことだったのです。
ここでは、時代ごとの意味の変化をやさしくたどってみましょう。
古代・中世の「国」は今の県や地方のようなもの
奈良時代(8世紀)から江戸時代にかけて、日本の土地は「国(くに)」という単位で区分されていました。
たとえば「大和国」「伊勢国」「出雲国」「筑前国」など、約60~70ほどの「国」があったといわれています。
これらの「国」には、それぞれ国府(こくふ)と呼ばれる役所のような施設が置かれており、朝廷から派遣された「国司(こくし)」がその地域を治めていました。
つまり、当時の「国」は、今で言う「県庁所在地」や「県」のような存在だったのです。
当時の人々にとって、「自分の国」というのは「自分の地域」「自分のふるさと」という意味でした。
たとえば「わが国」という言葉を使うときも、それは「日本」というより、「自分が住む国(くに)」を指していました。
このように、昔の「国」は国家ではなく地域を表していたのです。
この考え方は平安時代から江戸時代までずっと続きました。
たとえば江戸時代の人たちは、「紀伊の国に行く」「播磨の国の人」というように、地名の一部として「国」を使っていました。
つまり、「国」は“地名の単位”として完全に定着していたのです。
このように、「国」という言葉は古代から中世にかけて、「地方行政区分」としての意味が中心でした。
では、いつから今のように「日本国」という大きな単位を指すようになったのでしょうか?
「日本国」という考え方ができて、意味が広がった
「国」という言葉の意味が大きく変わったのは、明治時代です。
それまで日本には「国(くに)」がたくさんありましたが、明治維新によって国家としての“日本”がはっきりと形になったのです。
明治政府は、西洋のように一つの中央集権国家をつくるために、「藩」をなくし、「府県」という新しい区分を作りました。
そして、世界に向かって「日本は一つの国である」という考え方を示しました。
このとき初めて、「国」という言葉が国家(state / nation)という意味で強く使われるようになったのです。
たとえば「日本国憲法」や「大日本帝国憲法」という言葉にも見られるように、「国」は「ひとつの国家」としての意味を持つようになりました。
この時代を境に、「国」という言葉には二つの意味が共存するようになります。
| 時代 | 「国」の意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| 古代~江戸時代 | 地方の区分(地域・行政単位) | 出雲国、摂津国、武蔵国など |
| 明治時代以降 | 国家(ひとつの国) | 日本国、外国、韓国など |
このようにして、「国」という言葉は、「地域」を表す意味から「国家」を表す意味へと変化していきました。
でも、その変化の過程で、「昔の使い方」も言葉として残ったのです。
それが「全国」という表現です。
つまり、「全国」という言葉は、古い意味(地方の国々)と新しい意味(国家)を橋渡しするような言葉なのです。
古い「国(くに)」の名残を持ちながらも、現代では「日本全体」という新しい意味で使われている――それが「全国」なんですね。
実はこのような“意味の二重構造”を持つ言葉は、日本語にはたくさんあります。
たとえば「市(いち)」という言葉も、昔は「物を売る市場」を意味していましたが、今は「都市」の意味で使われています。
「国」も同じように、意味が広がり、時代に合わせて変わっていったのです。
「国」という言葉の中には“人のつながり”の意味もある
もうひとつ大切なのは、「国」という言葉にはもともと“人のまとまり”という意味があったことです。
古代の日本では、国というのは単なる土地ではなく、「その地域に住む人々の集まり」を指していました。
たとえば『古事記』や『日本書紀』では、「国を治める」「国をつくる」という言葉がたびたび出てきます。
それは「土地を支配する」というよりも、「人々の暮らしをまとめる」という意味でした。
つまり「国」という言葉には、もともと人の暮らし・文化・絆という概念が含まれていたのです。
この考え方は、今の日本語にも少し残っています。
たとえば「ふるさと」を意味する「故郷(こきょう)」のことを「国」と言うことがありますね。
「生まれた国」「帰る国」など、どこか温かい響きを持っています。
これは「国」という言葉が、単なる地理的な区分を超えて、人々の暮らしを包む“場所”を指していた名残です。
ですから、「全国」という言葉の中にも、実はそうした“人々が暮らす場所すべて”というニュアンスが隠れています。
単なる地図上の範囲ではなく、日本で生きるすべての人のいる場所――それが「全国」なのです。
このように見てくると、「国」という言葉は単に行政区分や政治的な単位を指すだけでなく、人と人とのつながりや文化のまとまりを表す言葉でもあるとわかります。
「全国」という言葉が今も親しまれているのは、そうした“人のまとまり”を感じさせる温かさがあるからかもしれませんね。
では次に、「全国」「全日本」「全都道府県」など、似たような言葉の違いを整理してみましょう。
それぞれどんな意味で使い分けられているのでしょうか?
「全国」「全日本」「全都道府県」って何が違うの?
「全国」「全日本」「全都道府県」。
どれも「日本中」を意味しているように見えますが、実は使われる場面やニュアンスが少しずつ違うんです。
どれを使うかによって、相手に伝わる印象や範囲のとらえ方が変わってくるんですよ。
この章では、それぞれの言葉がどんなときに使われ、どんな違いがあるのかを、わかりやすく整理していきます。
「全国」は日本のすべての地域を指す言葉
まず、「全国」はこれまで見てきたように、日本のすべての地域を表す言葉です。
つまり「北海道から沖縄まで、日本全体で」という意味です。
たとえば次のように使います。
- 全国ニュース(日本全体に関係するニュース)
- 全国大会(全国各地から人が集まる大会)
- 全国的に流行(日本のあちこちで同じ現象が起きる)
このように「全国」は、地理的な広がりを表す言葉です。
どの地域にも関係する、すべてを含む、というイメージですね。
言葉の雰囲気としては「日本中どこでも」という自然でやわらかい印象があります。
ニュースや教育番組、学校のプリントなどでもよく使われる、もっとも一般的で日常的な表現です。
「全日本」は組織や団体の名前で使われることが多い
次に「全日本」という言葉です。
こちらは「全国」とほぼ同じ意味を持ちますが、使われる場面が違います。
「全日本」は主に団体や組織の名称で使われることが多いんです。
たとえば次のような例があります。
- 全日本柔道連盟(日本全国の柔道団体をまとめる組織)
- 全日本吹奏楽コンクール(全国規模の大会の正式名称)
- 全日本大学駅伝(全国の大学チームが出る大会)
「全日本」は、日本全体を代表する組織・大会などに使われる言葉です。
「全国大会」よりも少しかしこまった印象で、正式名称っぽい響きがありますね。
また、「全日本」とつけることで、「日本を代表する」「日本をまとめる」といった意味合いが強まります。
たとえば「全国野球大会」よりも「全日本野球選手権大会」の方が、公式で規模が大きく感じられるのです。
つまり、「全国」は範囲を表す言葉、「全日本」は代表性や統一感を強調する言葉だと言えます。
「全都道府県」は“数”を強調したいときに使う
では「全都道府県」という言葉はどうでしょうか?
こちらはニュースや報告書などでよく見かける表現です。
「全国」とは少し違って、47の都道府県すべてを数として強調したいときに使われます。
たとえばこんな使われ方をします。
- 全都道府県でアンケートを実施
- 全都道府県が協力して取り組む
- 全都道府県で確認された
このように、「全都道府県」は地理的な広がりというよりも、「47すべてそろっている」「例外がない」という意味で使われます。
つまり数量的・行政的な表現なんですね。
一方で、「全国」はもっと感覚的でやわらかい言葉なので、ニュースタイトルや日常会話では「全国」が好まれます。
たとえば「全国で流行中」と言うと自然ですが、「全都道府県で流行中」と言うと少しかしこまって聞こえますよね。
3つの言葉の違いを表で整理してみよう
それぞれの使い分けをまとめると、次のようになります。
| 言葉 | 主な意味 | 使われる場面 | 印象・特徴 |
|---|---|---|---|
| 全国 | 日本のすべての地域 | ニュース、案内、日常会話など | やわらかく、感覚的 |
| 全日本 | 日本を代表する・まとめる | 大会名、組織名、正式名称など | 公式・権威的 |
| 全都道府県 | 47すべてを含む(数量的) | 報告書、調査、行政文書など | 正確で形式的 |
このように、「全国」「全日本」「全都道府県」はどれも似た意味を持ちながらも、使う目的や場面によって微妙に違うニュアンスを持っています。
なぜ「全県」や「全都道府県」という言葉より「全国」がよく使われるの?
最後に、「なぜ“全県”とか“全都道府県”ではなく『全国』という言葉が好まれるの?」という点を見てみましょう。
理由は大きく3つあります。
- 言葉が短く、覚えやすい
「全国」は二文字で表せるので、タイトルや見出しに使いやすい。ニュースでも聞き取りやすい。 - 意味が感覚的で、広がりを感じさせる
「全国」という言葉には、単に“47都道府県”という数字だけでなく、“日本全体”“どこまでも広がる”という柔らかい印象がある。 - 古くから使われてきた慣用表現だから
明治以前から「全国」という言葉が使われており、長年の習慣で自然に定着している。
つまり、「全国」という言葉は、短くて便利・感覚的で親しみやすい・歴史的に根付いているという3つの理由で、今も日本語の中で生き続けているのです。
このように、同じように「日本全体」を指す言葉でも、「全国」「全日本」「全都道府県」にはそれぞれに個性と使いどころがあります。
どれを選ぶかで、文章の雰囲気も少し変わってくるのです。
次の章では、そうした「全国」という言葉が、なぜ今でも私たちの生活の中に残っているのか――つまり言葉としての文化的な残り方を見ていきましょう。
言葉としての「全国」が残った理由
「全国」という言葉は、すでに1300年以上の歴史をもつ日本語の中で、今もなお使われ続けています。
「都道府県」という新しい区分が生まれてから150年以上経っているのに、なぜ「全国」という言葉が消えなかったのでしょうか?
それには、日本人の言葉への感覚と文化的な背景が深く関係しています。
「全国大会」「全国放送」などに残る昔の表現
まず、「全国」という言葉が今でも多く使われている代表的な例を見てみましょう。
私たちは日常の中で、次のような表現をよく耳にします。
- 全国大会(スポーツや芸術の大会)
- 全国ニュース(すべての地域に関係するニュース)
- 全国放送(日本全体で放送されるテレビ・ラジオ)
- 全国販売(全国どこでも購入できる商品)
これらの言葉を聞くと、「ああ、日本じゅうでやっているんだな」とすぐにイメージできますよね。
それほど「全国」という言葉は、日本中=全部という感覚と強く結びついています。
面白いのは、これらの表現がほとんど明治時代から変わっていないということです。
新聞やラジオが登場したころから、「全国放送」「全国紙」などの言葉が生まれ、
それがそのまま定着しました。
つまり、「全国」という言葉は、新しいメディアや社会の変化とともに“生き延びてきた”言葉なのです。
そして、この「全国」という言葉の持つイメージ――
「どこでもつながっている」「すべてを含む」「広がりを感じる」――が、人々に心地よく響いたため、自然と使い続けられてきました。
「全国」は“日本全体がつながっている”という感覚を伝える
「全国」という言葉がここまで根強く残っている背景には、日本人特有の“つながり”を大切にする感覚があります。
日本では昔から、「地域ごとに違っていても、全体でひとつ」という考え方が好まれます。
たとえばお祭りも、「各地の祭りが全国で開催されている」というように、地域の個性と全体の一体感を同時に大事にしてきました。
「全国」という言葉はまさにその考え方を表しています。
ひとつひとつの地域(都道府県)は独立しているけれど、それらをまとめて見ると「日本全体」になる。
そのまとまりの感覚を、たった二文字で表しているのが「全国」なのです。
だから「全国大会」や「全国の皆さんに感謝します」という言葉を聞くと、私たちは自然と「日本じゅうがひとつにつながっている」ような温かい気持ちになるのです。
つまり「全国」という言葉は、地理的な範囲を超えて、“心のつながり”を感じさせる言葉でもあるのです。
言葉は文化とともに生き続ける
言葉というものは、単に意味だけでなく、その国の文化や価値観とともに生きています。
「全国」という言葉も例外ではありません。
日本人は昔から、「変わるものの中に変わらないものを残す」ことを大切にしてきました。
たとえば、古い地名が新しい行政区分になっても残っているように、言葉にも“名残”を残す文化があります。
「全国」という言葉もまさにその一つ。
制度としての“国(くに)”がなくなっても、言葉としての“国”が残り、今も生きています。
これは、言葉に対する日本人の感性の豊かさを物語っています。
たとえば、同じように昔の言葉が今も残っている例を挙げてみましょう。
- 「お正月」…昔の暦(旧暦)の名残
- 「神無月」「師走」…古い月名の名残
- 「お盆」…仏教文化と古代信仰の名残
これらの言葉も、時代が変わっても消えずに生き残っています。
「全国」も同じように、文化の層を重ねながら現代に伝わってきた言葉なんです。
だから「全国」という言葉を使うとき、私たちは気づかぬうちに、古代からの日本語の伝統を受け継いでいるとも言えますね。
「全国」は短くて力がある“万能ワード”
もうひとつの理由は、単純に便利で使いやすいということ。
「全国」は2文字で意味がすぐ伝わるうえに、どんな分野にも合わせやすい万能ワードです。
たとえば:
- 全国ネットのテレビ番組(放送範囲を示す)
- 全国大会(イベントの規模を示す)
- 全国展開(企業の活動範囲を示す)
どの使い方でも、「日本全体で」「どこでも」というニュアンスを自然に伝えられます。
これは日本語の中でもかなり珍しい性質で、「全国」はいわばスケールを広げる魔法の言葉なんです。
そしてもう一つ面白いのは、「全国」という言葉は聞く人に“希望”や“誇り”のような気持ちを与えることです。
たとえば「全国大会出場!」と聞くと、それだけでなんだか特別な感じがしますよね。
それは「全国」という言葉が持つ広がり・一体感・達成感のイメージが、私たちの感情に響くからなんです。
つまり、「全国」という言葉はただの地理的表現ではなく、人の心を動かす力を持った言葉でもあるのです。
言葉は変わるけれど、“意味の根っこ”は残る
最後に大切なことをひとつ。
言葉というのは時代とともに変わりますが、意味の根っこは意外と変わらないということです。
「国」という言葉が昔は地方を指し、今では国家を指すようになりました。
それでも、人々の暮らす場所や絆をまとめて「国」と呼ぶ感覚は、今もどこかに残っています。
そして「全国」という言葉は、その感覚を今に伝える“橋”のような存在なんです。
だから「全国」という言葉を使うとき、そこには「日本のすべての地域」だけでなく、
「日本という国で暮らす人たちすべて」という人のつながりの意味も含まれています。
こうして見てくると、「全国」が現代まで生き残った理由は、単なる言葉の慣用だけではなく、
便利さ・文化の継承・心のつながりの3つが重なっているからだと言えるでしょう。
このように、「全国」という言葉には長い歴史と人々の思いが込められています。
次の章では、この言葉を子どもにもわかりやすく説明できるように、やさしくまとめてみましょう。
子どもにも説明できる!「全国」のやさしいまとめ
ここまで、「全国」という言葉がなぜ「都道府県の集まり」なのに“国”という字を使うのかを、
歴史や言葉の変化を通して見てきました。
でも、もしお子さんから突然「なんで“全国”っていうの?」と聞かれたら――
どう答えればいいでしょうか?
この章では、大人が子どもにわかりやすく説明できるように、「全国」の意味をやさしくまとめてみましょう。
「全国」は「日本じゅう」のことなんだよ
まず一番シンプルな答えから言うと、「全国」は“日本じゅう”という意味です。
「日本のどこに行っても」「全部の地域」というイメージで使われます。
たとえば、ニュースで「全国的に雨が降るでしょう」と言えば、北海道から沖縄まで、
どの地域でも雨が降るかもしれないという意味になります。
また、「全国大会に出場!」と言えば、日本のいろいろな場所から人が集まる大会のことを指します。
つまり、「全国」というのは日本のすべてをひとまとめにした言葉なんです。
昔の日本では「国(くに)」がたくさんあった
でも、「全国」という言葉には、もうひとつ大切な意味があります。
それは昔の日本の区分の名残だということです。
今は47の都道府県に分かれていますが、昔の日本では「〇〇国(くに)」という分け方をしていました。
たとえば:
- 出雲国(いずものくに) → 島根県のあたり
- 武蔵国(むさしのくに) → 東京都・埼玉県のあたり
- 播磨国(はりまのくに) → 兵庫県のあたり
こうした「国(くに)」がたくさん集まってできていたのが、昔の日本です。
だから、「全国」とはもともと「すべての国(くに)」という意味でした。
時代が変わって「国(くに)」の代わりに「都道府県」という呼び方ができましたが、
言葉としての「全国」だけは残ったのです。
つまり「全国」は、昔の日本の地名の区分を今に伝える“ことばの化石”みたいな存在なんですね。
「全国」は“みんなでひとつ”という気持ちを表す言葉
もうひとつ、「全国」という言葉が今もよく使われる理由があります。
それは、日本のすべての人や地域がつながっているという温かい気持ちを表せるからです。
たとえば、テレビ番組で「全国の皆さん、こんにちは!」と言うとき、
「日本のどこにいる人にも届くように」という意味がこもっています。
また、「全国大会」は「日本じゅうから人が集まって力を合わせる」という意味でもあります。
だから「全国」という言葉は、ただ地理的に“広い”というだけでなく、
「みんながひとつになる」「日本じゅうで一緒に」という気持ちも伝えているのです。
実はこれ、英語にはちょっと訳しにくい表現なんです。
「nationwide(ネーションワイド)」という言葉がありますが、
「全国放送」を英語にすると “nationwide broadcast” と言っても、
日本語の「全国放送」ほど“みんなでつながっている”感じは出ません。
日本語の「全国」には、人の温かさやつながりの感覚が含まれているんです。
子どもにも説明できる「全国」の言い方の例
では実際に、お子さんにどう説明すれば伝わりやすいでしょうか?
いくつかの言い方の例を紹介します。
| 子どもの質問 | やさしい答え方の例 |
|---|---|
| 「なんで“全国”っていうの?」 | 「むかしの日本は“くに”がいっぱいあったんだよ。ぜんぶの“くに”をまとめて“全国”って言ったの。その言葉が今も残ってるんだ」 |
| 「“全国大会”ってどういう意味?」 | 「日本じゅうの人があつまって大会をするってことだよ」 |
| 「“全国放送”ってなに?」 | 「日本のどこでも見られるテレビ番組のことだよ」 |
| 「“全国”って“全日本”と同じ?」 | 「だいたい同じだけど、“全日本”は大会やチームの名前に使うことが多いんだ」 |
このように、少しだけ歴史を交えて説明してあげると、お子さんも「なるほど!」と納得してくれるはずです。
言葉の歴史を知ると、身近な日本語がもっと面白くなる
「全国」という言葉のように、普段何気なく使っている日本語の中には、昔の日本の名残がたくさんあります。
たとえば「上り」「下り」という言葉も、昔の都・京都を中心にした考え方が残っている表現です。
(東京へ行くのが“上り”、地方へ行くのが“下り”。)
言葉は変わっていくものですが、昔の言葉が少し形を変えて今も生きていることがあります。
それがまさに「全国」という言葉なんです。
ですから、お子さんに「全国ってなに?」と聞かれたときは、
「それはね、日本じゅうのことなんだけど、むかしは“くに”がいっぱいあって、その名残なんだよ」
と笑顔で教えてあげてください。
その一言で、言葉の歴史と文化を自然に伝えることができます。
そして、そんなやりとりの中で、子どもが「日本の言葉っておもしろいね」と感じてくれたら――
それこそが、「全国」という言葉が今も生き続ける一番の理由かもしれません。
次の章では、これまでの内容をもとに、「全国」にまつわる素朴な疑問をまとめたQ&Aを紹介します。
よくある質問(FAQ):「全国」に関する素朴な疑問
Q1:「全国」と「全日本」は同じ意味なの?
とてもいい質問です。
「全国」と「全日本」は、ほとんど同じ意味を持っていますが、使う場面が少し違います。
「全国」は、地理的な広がりを表す言葉。
つまり「日本のすべての地域」「日本じゅうで」という意味です。
ニュースや会話、案内文などでよく使われます。
一方、「全日本」は、日本全体を代表する組織・大会・チームなどの正式名称に使われることが多い言葉です。
たとえば:
- 全国大会 … 日本の各地から人が集まる大会
- 全日本大会 … 日本を代表する大会(より公式)
- 全日本柔道連盟 … 日本中の柔道団体をまとめる全国組織
つまり、「全国」は範囲を表す言葉、「全日本」は代表性を強調する言葉と覚えるとわかりやすいです。
Q2:「全国」と「全都道府県」はどう違うの?
「全国」は感覚的な言葉で、「全都道府県」は正確な言葉です。
どちらも「日本の全部」を意味しますが、使う目的が違います。
ニュースや会話では「全国的に流行中」のように「全国」を使うのが自然です。
一方、役所の報告書や調査結果では、「全都道府県で実施」と書くように、
47すべてを明確に伝えたいときに使います。
つまり、「全国」は「日本じゅうざっくり全部」
「全都道府県」は「数としての全部」
というイメージの違いです。
Q3:「全国民」と「日本国民」は同じ意味?
ほぼ同じ意味ですが、使われる場面と印象が違います。
「全国民」は、日本の国民すべてという意味で、範囲を広く感じさせる言葉です。
「全国民が注目する」「全国民の願い」など、感情や意識を表すときによく使われます。
「日本国民」は、法律や公式文書などで使われる正確な言葉です。
「日本国民の権利」「日本国民としての義務」など、法的・制度的な文脈で使われます。
つまり、「全国民」はニュースや会話向き、「日本国民」は法律や制度の話向きです。
Q4:「全国大会」と「全日本大会」ってどっちが上?
これもよくある疑問です。
結論から言うと、「どちらが上」というより使う団体や分野によって違うのが正解です。
スポーツの世界では、
・「全国大会」=地方予選を勝ち抜いた人が出る大会
・「全日本大会」=日本を代表するレベルの大会
というように、使い分けられていることがあります。
たとえば、学生スポーツでは「全国高等学校〇〇大会」と呼ばれるのに対し、
社会人やプロの競技では「全日本選手権」と呼ばれることが多いです。
つまり、「全日本」のほうが少し公式・上位の印象を与えやすい、という違いがあります。
Q5:「全国ネット」とはどういう意味?
「全国ネット」は、主にテレビやラジオの放送で使われる言葉です。
これは「全国放送」とほぼ同じ意味で、日本のどの地域でも同じ内容が放送されるということを表します。
たとえば、NHKのニュースや『紅白歌合戦』のような番組は「全国ネット」です。
どの都道府県でも同じ番組が同時に見られます。
一方で、「ローカル放送」は特定の地域(例:関西ローカル、東海ローカル)でしか放送されない番組です。
このように、「全国」はメディアの世界でも“全範囲で同じ”という意味で使われています。
Q6:「全国版」と「地方版」の違いは?
新聞や雑誌では、「全国版」「地方版」という言葉がよく登場します。
これは記事がどの地域に向けて書かれているかの違いです。
たとえば新聞では、
・「全国版」=全国どこでも同じ内容の記事
・「地方版」=地域限定の記事(地元ニュースなど)
という意味になります。
つまり、「全国版」は「すべての地域に共通するニュース」、
「地方版」は「その地域だけのニュース」です。
このように、「全国」は「日本のすべてに共通するもの」を表す便利なキーワードとして、メディアでもよく使われています。
Q7:外国でも「全国」という言葉はあるの?
あります。
ただし、意味や使われ方は国によって少し違います。
たとえば、中国語でも「全国(クゥァン グオ)」という言葉があり、「その国のすべての地域」という意味で使われます。
韓国語にも「전국(チョンゴク)」という同じ意味の言葉があります。
つまり、「全国」という言葉は漢字文化圏に共通する表現なんです。
英語では “nationwide” が同じ意味に近いですが、「全国大会」を “National Tournament” と言うなど、文脈によって少し変わります。
日本語の「全国」は、漢字の持つ意味がそのまま伝わる、表現力のある言葉なんですね。
Q8:「全国」という言葉は今後なくなることはある?
おそらく、なくならないでしょう。
なぜなら「全国」という言葉は、すでに文化の一部として定着しているからです。
「全国大会」「全国ネット」「全国的に」など、生活の中で当たり前のように使われている言葉は、
すぐに新しい言葉に置き換わることはありません。
むしろ、「全国〇〇」という新しい言葉(例:全国グルメフェア、全国チェーン)も次々と生まれています。
つまり、「全国」はこれからも変わらず、
“日本のすべて”をあらわす代表的な言葉として生き続けていくでしょう。

