ピサの斜塔の現在の傾きはどのくらいか
結論:ピサの斜塔の現在の傾きは約4度です。これは高さ約56メートルの塔の頂上が、垂直から約4.5メートルずれていることを意味します。一時期は倒壊の危険があったものの、大規模な修復工事によって安定化され、現在は観光名所として安全に登ることも可能です。
ピサの斜塔とはどんな建物?
ピサの斜塔(イタリア語:Torre Pendente di Pisa)は、イタリア・トスカーナ州の都市ピサにある、ロマネスク様式の鐘楼(ベルタワー)です。ドゥオモ(大聖堂)、洗礼堂、墓地と並んで「奇跡の広場(Piazza dei Miracoli)」に建てられており、世界遺産にも登録されています。
なぜピサの斜塔は傾いてしまったのか?
ピサの斜塔が傾いた理由は、建設当初からの地盤の軟弱さにあります。1173年に着工されたこの塔は、わずか3階層目を建てた時点で既に傾き始めました。これは、地下にある柔らかい粘土や砂層が塔の重さに耐えきれず、片側が沈下してしまったためです。
当時の技術では、こうした地盤沈下に対する十分な対策が取れなかったため、その後も傾きは徐々に進行していきました。
どのくらい傾いていたのか?
最も傾いていた1990年頃には、傾斜角が約5.5度まで進行しており、塔の上部が地面から垂直に引いた線からおよそ5.5メートルもずれていました。このままでは倒壊の危険が高いと判断され、ピサの斜塔は一時的に閉鎖されることになります。
修復工事で傾きはどのように変わったのか?
1990年から2001年にかけて、国際的な専門家チームによって大規模な修復工事が行われました。この工事では、以下のような方法が用いられました。
- 塔の北側の地下から土を少しずつ取り除き、南側の沈下を逆転させる「アンダーピニング工法」
- 地盤に鋼管を打ち込み、沈下を防ぐ工法
- 塔の一部に重りを置いてバランスを取る工法
こうした慎重な作業により、傾きは約4.0度にまで軽減されました。現在では、塔は安定しており、300年は倒壊の心配がないとされています。
4度の傾きってどれくらい?実感しにくい角度を解説
角度で「4度」と言われても、あまりピンと来ないかもしれません。ですが、56メートルの高さにある頂上が、垂直線から約4.5メートルもずれていると考えると、かなりの傾きです。
ちなみに、日常生活で使う角度としての4度は、たとえば本棚が4度傾いていたら、すぐに本が倒れてしまうレベル。ピサの斜塔の傾きがいかに異常かが分かります。
ピサの斜塔は登れるの?安全なの?
はい、現在のピサの斜塔は安全が確認されており、登ることができます。294段のらせん階段を登って頂上にたどり着くと、ピサの街を一望できる素晴らしい景色が待っています。
ただし、混雑を避けるため事前予約制になっており、時間制限も設けられています。現地でのチケット購入も可能ですが、オンライン予約をおすすめします。
なぜ倒れずにすんだのか?
ピサの斜塔が倒れなかった最大の理由は、傾きながらも地盤とバランスを保っていたことにあります。地盤が柔らかすぎて、かえって力を吸収していたという説もあるほどです。
さらに、修復工事が早い段階で行われたことが幸いし、倒壊のリスクを未然に防ぐことができました。
ピサの斜塔の魅力とは?
傾いている塔という珍しさはもちろんですが、実はこの塔、建築美としても評価が高いのです。白い大理石で作られた美しいアーチや彫刻、八角形の鐘楼など、芸術的価値も兼ね備えています。
観光客の中には、「塔を支えているようなポーズ」で写真を撮るのが定番となっており、SNS映えスポットとしても人気です。
豆知識:他にも傾いた塔はある?
実は世界には、ピサの斜塔以外にも傾いた塔が存在します。たとえば、ドイツの「ズールの傾いた塔」や、イギリスの「チェスターの教会塔」などです。ただし、いずれもピサの斜塔ほど有名ではありません。
「傾いたまま安全を保つ」という特徴を最大限に活かし、観光資源として成功したのはピサの斜塔ならではの魅力です。
まとめ:ピサの斜塔の角度とその物語
- 現在の傾きは約4度で、頂上が約4.5メートルずれている
- 最大では5.5度まで傾き、倒壊寸前だった
- 修復工事により安定し、安全に登ることができる
- 世界中から観光客が訪れる人気スポット
- 「傾いているのに倒れない」という事実そのものが魅力
ピサの斜塔は、建築の失敗から始まったにもかかわらず、その個性が逆に世界的な人気を呼び起こしました。単なる「傾いた塔」ではなく、「人の知恵と技術、そして歴史の重み」が詰まった、世界に一つだけの存在です。