CCSのCO2は地下からなぜ漏れない?仕組みと安全対策を解説

科学

「CCSで地下に閉じ込めたCO2は、本当に漏れないの?」と気になる方も多いのではないでしょうか。

地下に圧入すると聞くと、地震や断層の影響、海底下からの移動などが心配になりますよね。

CCSでは、CO2をただ地下へ送り込むのではなく、上向きの移動を抑える地層を選び、圧力を管理しながら継続して監視することで、長期的に貯留しやすい仕組みを整えます。

さらに時間の経過とともに、CO2は地層水に溶けたり、岩石の隙間にとどまったりして、少しずつ動きにくくなる働きも期待されています。

この記事では、CCSのCO2が地下からなぜ漏れにくいのかを、貯留する地層の条件、安全対策、監視の仕組みまでわかりやすく解説します。

地下の見えない場所で、どのようにCO2の状態を確かめているのかも紹介するので、CCSへの疑問をすっきり整理したい方はぜひ読み進めてみてください。

この記事でわかること

  • CCSのCO2が地層のフタや複数の固定作用によって漏れにくくなる仕組み
  • CO2を圧入する深さと、貯留層・遮へい層が必要になる理由
  • 地震・断層・圧入井の影響を抑えるための事前調査と圧力管理
  • 弾性波探査などによる監視と、苫小牧CCS実証試験で行われている確認
  1. CCSのCO2が地下から漏れにくいのは地層のフタと複数の固定作用があるため
    1. CO2は地下の空洞ではなく砂岩などの微細な隙間に入る
    2. 水より軽いCO2の上昇を泥岩などの遮へい層が抑える
    3. 構造・残留・溶解・鉱物化の4つの仕組みで閉じ込める
  2. CO2は地下約1,000~3,000メートルの地層へ圧入される
    1. 分離・回収したCO2を輸送して地下へ送り込む
    2. 高温・高圧下の超臨界状態にして効率よく貯留する
    3. 深部塩水層や枯渇した油・ガス田が主な貯留先になる
  3. CCSに適した場所は貯留層と遮へい層がそろう地点に限られる
    1. 十分な深さと容量を持つ地層を選ぶ
    2. CO2を通しにくい遮へい層の厚さと連続性を調べる
    3. 活断層や古い井戸などの経路になり得る場所を確認する
  4. 地震・断層・圧入井の影響は事前調査と圧力管理で抑える
    1. 地震による地層への影響を地質データから評価する
    2. 断層を避けてCO2の圧入地点と圧力を決める
    3. 圧入井は多重構造やセメントで密閉し閉鎖後も管理する
  5. 地下のCO2は弾性波探査や各種センサーで継続的に監視する
    1. 弾性波探査でCO2の位置と広がりを把握する
    2. 圧力・温度・地下水の変化から異常の兆候を調べる
    3. 海底下では海水や海底の状態も観測する
  6. 想定外の移動が見つかった場合に備えて対応計画を整える
    1. 人や生態系への影響はCO2の量・濃度・場所によって異なる
    2. 圧入の停止や圧力調整などで原因に応じて対応する
    3. 監視結果を基に追加調査や必要な対策を行う
  7. 時間がたつほど溶解や鉱物化が進みCO2は動きにくくなる
    1. 地層の隙間に取り残される作用は圧入後から進む
    2. 地層水への溶解には長い時間がかかる
    3. 鉱物として固定されるまでの期間は地質条件で異なる
    4. 長期的な安全性は地点ごとの予測と監視で確かめる
  8. 海底下CCSも陸上と同じ地質条件を確認して実施する
    1. CO2を海中ではなく海底よりさらに深い地層へ貯留する
    2. 海底まで続く断層や既存井戸の有無を事前に調べる
    3. 海中への移動を想定した監視体制を設ける
  9. 苫小牧CCS実証試験では圧入後もCO2の状態を監視している
    1. 海岸から海底下の貯留層へCO2を圧入した
    2. 弾性波探査や海洋環境調査を組み合わせて確認した
    3. 国内のCCS事業に向けて監視データと知見を蓄積している
  10. まとめ

CCSのCO2が地下から漏れにくいのは地層のフタと複数の固定作用があるため

CCSのCO2は地下からなぜ漏れない?仕組みと安全対策を解説

CCSで地下に貯留されたCO2が地表へ移動しにくいのは、上部にある水を通しにくい地層がフタのように働くうえ、CO2そのものを地層内にとどめる仕組みがいくつもあるためです。

単に地下へ入れるだけではなく、地層の形状や岩石の性質を利用して、長い時間をかけてCO2が動きにくくなる状態をつくります。

ただし、地下ならどこでも同じように貯留できるわけではなく、CO2を受け入れる層と上昇を抑える層が適切に重なっていることが大切です。

CO2は地下の空洞ではなく砂岩などの微細な隙間に入る

CCSのCO2は、大きな洞窟や人工的な空洞にためるのではありません。

主に砂岩などの岩石の中にある、目では確認しにくい細かな隙間へ入り込みます。

こうした隙間は「孔隙」と呼ばれ、地下水や石油、天然ガスなどが存在する場所としても知られています。

CO2は岩石の粒と粒の間に分散して入るため、ひとつの大きな空間にまとまって存在する場合と比べ、移動しやすい経路が限られやすくなります。

また、隙間どうしは複雑につながっており、CO2が通る際には岩石表面との作用や毛細管力の影響も受けます。

そのため、CO2の一部は通路の途中に細かく取り残され、地層内に保持されます。

「地下の空洞にCO2がたまっている」というイメージとは異なり、岩石の細かな隙間に広く分布することが特徴です。

水より軽いCO2の上昇を泥岩などの遮へい層が抑える

地下で貯留されたCO2は、周囲の水より密度が小さい状態では上向きに移動しようとする性質があります。

そこで重要になるのが、貯留層の上に重なる泥岩などの遮へい層です。

遮へい層は粒子が非常に細かく、CO2や水が通り抜ける隙間が少ないため、上昇を抑える地層のフタとして働きます。

粘土を多く含む泥岩や頁岩は、一般に流体を通しにくい性質をもちます。

さらに、遮へい層がドーム状に上へふくらんだ地質構造であれば、上に移動したCO2がその下に集まりやすくなります。

このように、CO2を受け入れる砂岩などの層と、通しにくい泥岩などの層が組み合わさることで、地下での安定した貯留につながります。

  • 貯留層:CO2が岩石の隙間へ入る層
  • 遮へい層:CO2の上向きの移動を抑える層
  • 地質構造:CO2が一か所に集まりやすくなる地層の形

構造・残留・溶解・鉱物化の4つの仕組みで閉じ込める

CCSでは、遮へい層によるフタだけに頼るのではなく、複数の固定作用が重なってCO2をとどめます。

代表的な仕組みは、構造トラップ、残留トラップ、溶解トラップ、鉱物トラップの4つです。

仕組み CO2がとどまる理由
構造トラップ 遮へい層と地層の形によって上方への移動が抑えられる
残留トラップ 岩石の細かな隙間にCO2の一部が取り残される
溶解トラップ CO2が地下水に溶け込み単独で動きにくくなる
鉱物トラップ 岩石成分との反応を通じて安定した鉱物の形に近づく

構造トラップは、遮へい層と地層の形状を利用してCO2を保持する、基本となる仕組みです。

残留トラップでは、CO2が岩石の隙間に小さな粒状で残り、まとまって移動しにくくなります。

溶解トラップでは、CO2が地下水へ少しずつ溶け込むことで、気体や超臨界状態のCO2として上昇する性質が弱まります。

鉱物トラップは進行に時間がかかる場合があるものの、CO2が岩石中の成分と反応して固体に近い形で安定する可能性に関わる仕組みです。

このようにCCSは、物理的にフタをする作用、隙間に残す作用、水に溶かす作用、岩石と結び付く作用を組み合わせてCO2を地下にとどめます。

ひとつの働きだけではなく、複数の仕組みが段階的に作用することが、CO2が地下から漏れにくいと考えられる大きな理由です。

CO2は地下約1,000~3,000メートルの地層へ圧入される

CCSのCO2は地下からなぜ漏れない?仕組みと安全対策を解説

CCSで回収したCO2は、一般に地下約1,000~3,000メートルの深さにある地層へ送り込まれます。

この深さでは地温と圧力が十分に高く、CO2を少ない体積で効率よく貯留しやすい状態にできるためです。

地上で分離・回収したCO2は、輸送設備を通じて圧入地点へ運ばれ、専用の井戸から地下深くの岩石の隙間へ注入されます。

分離・回収したCO2を輸送して地下へ送り込む

CCSは、工場や発電所などから出るガスの中からCO2を分離・回収するところから始まります。

回収されたCO2は水分や不純物をできるだけ取り除いたうえで、圧縮されて輸送しやすい状態に整えられます。

輸送方法は、圧入地点までの距離や地形、回収量などに応じて選ばれます。

工程 主な内容
分離・回収 排出ガスなどからCO2を取り出す
圧縮・調整 輸送や地下への圧入に適した状態へ整える
輸送 配管や船舶などで貯留地点の近くまで運ぶ
圧入 専用の井戸を通して深い地層へ送り込む

陸上で回収したCO2を近くの地下へ送る場合には、配管が活用されることがあります。

回収地点と貯留地点が離れている場合には、船舶などを組み合わせる考え方もあります。

地下へ送り込む井戸は、地表から目的の地層まで届くように設計され、CO2が通る管を備えています。

なお、CO2を地下へ入れることは、単に空洞へ流し込む作業ではありません。

岩石の中にある細かな隙間へCO2を行き渡らせることが、地下貯留の基本です。

高温・高圧下の超臨界状態にして効率よく貯留する

地下深部では、地上よりも温度と圧力が高くなります。

おおむね地下800メートルより深い環境では、条件が整うとCO2は液体と気体の性質をあわせ持つ超臨界状態になりやすいとされています。

実際のCCSでは、より余裕のある条件を見込み、地下約1,000メートル以深を対象とする計画が多く見られます。

超臨界状態のCO2は気体より体積が小さくなるため、岩石の隙間に効率よく収めやすくなります。

  • 気体に比べて体積を小さくしやすい
  • 岩石の細かな隙間へ入り込みやすい
  • まとまった量を地下に貯留する計画を立てやすい

ただし、地下が深ければ深いほどよいというわけではありません。

深さに加えて、地層の厚さや広がり、岩石の性質などを確認し、CO2を受け入れられる環境かどうかを判断します。

地下約1,000~3,000メートルという深さは、CO2を超臨界状態に保ちやすく、地下の地層を利用しやすい範囲の目安と考えるとわかりやすいでしょう。

深部塩水層や枯渇した油・ガス田が主な貯留先になる

CO2の主な貯留先として考えられているのは、深部塩水層と、採掘を終えた油田・ガス田です。

深部塩水層とは、地表から深い場所にあり、塩分を含む地下水で満たされた地層を指します。

この地下水は飲用などに利用されにくい場合が多く、CO2を貯留する候補として調査が進められています。

一方、枯渇した油田・ガス田は、過去に石油や天然ガスが存在していた地下の地層です。

地下資源が集まっていた地層は、その周辺の地質情報や開発時の記録が残っていることがあり、貯留可能性を検討する際の参考になります。

貯留先の例 特徴
深部塩水層 塩分を含む地下水がある深い地層で、広い貯留容量が期待される場合がある
枯渇した油田・ガス田 資源開発で得られた地下情報を活用できる場合がある

どちらの場合も、CO2は岩石そのものに大きな空間がある場所へ入るのではなく、砂岩などに見られる微細な隙間へ貯留されます。

そのため、地上からは硬く見える岩石でも、地下ではCO2を受け入れられる性質を持つことがあります。

CCSでは、回収したCO2を深い地層へ送り、地下の温度・圧力環境と岩石の隙間を利用して貯留します。

こうした地下の条件を活かすことが、CO2を長期的に地層内へとどめる取り組みの土台になります。

CCSに適した場所は貯留層と遮へい層がそろう地点に限られる

CCSのCO2は地下からなぜ漏れない?仕組みと安全対策を解説

CCSでCO2を地下に貯留するには、CO2を受け入れる貯留層と、上向きの移動を抑える遮へい層が、適切な状態で組み合わさっていることが大切です。

どこでも実施できるわけではなく、地層の深さ・広がり・岩石の性質・周辺の地質構造を調べたうえで、長期的な貯留に向く地点だけが候補になります。

事業者や研究機関は、地下の地質データ、過去の掘削記録、地震波を用いた調査などを組み合わせ、地層を立体的に把握しながら候補地を絞り込みます。

十分な深さと容量を持つ地層を選ぶ

貯留層には、CO2が入り込める細かな隙間を持ち、一定の範囲に広がっていることが求められます。

このような地層では、岩石の粒と粒の間にある空間へCO2が分散して入り、地下水がある場合にはその一部と置き換わるように貯留されます。

候補地を選ぶ際は、隙間の量を示す「孔隙率」と、流体が通りやすい度合いを示す「浸透率」を確認します。

孔隙率があってもCO2が地層内へ広がりにくい場合があるため、容量と通しやすさの両方を見ることが欠かせません。

確認する条件 見る理由
地層の深さ 地下の温度・圧力条件を利用し、CO2を安定した状態で貯留しやすくするためです。
地層の広がりと厚さ 必要な量のCO2を受け入れられる容量があるかを見極めるためです。
孔隙率と浸透率 岩石の隙間にCO2を貯留できるか、地層内で無理なく分布しやすいかを確認するためです。
地下水の利用状況 生活用水などに利用される地下水への配慮が必要になるためです。

また、地層の中にCO2を受け入れられる容量が見込まれても、地表に近い地下水層や周辺環境との位置関係まで含めて判断されます。

「深い場所に空間がある」だけでは候補地として十分ではありません。

貯留層の上に適切な遮へい層があり、周囲を含めて安定した地質条件が確認できることが、地点選定の前提になります。

CO2を通しにくい遮へい層の厚さと連続性を調べる

遮へい層とは、貯留層の上側を覆い、CO2や地下水が通りにくい性質を持つ地層のことです。

泥岩や頁岩のように粒子が細かく、流体が通りにくい岩石が遮へい層として検討されることがあります。

貯留層がCO2を受け止める「器」だとすれば、遮へい層はその上を覆う「ふた」の役割を担います。

ただし、遮へい層は単に存在すればよいのではなく、十分な厚さがあり、対象範囲に連続して分布していることが重要です。

  • 遮へい層が貯留層の上を広く覆っているかを確認します。
  • 岩石の割れ目や性質の変化が少ないかを調べます。
  • 場所によって遮へい層が薄くなっていないかを確認します。
  • 複数の通しにくい地層が重なっているかも評価します。

地下の地層は水平に均一に重なっているとは限らず、傾きや起伏、岩石の変化を伴うことがあります。

そのため、限られた地点の情報だけで判断せず、複数の調査データから地層のつながりを推定します。

遮へい層の評価では、岩石そのものの性質に加えて、貯留層との位置関係や地質構造全体を確認することが大切です。

活断層や古い井戸などの経路になり得る場所を確認する

地点選定では、自然の地層だけでなく、断層や過去に掘られた井戸の位置も丁寧に確認します。

断層は地下の岩盤がずれた境界であり、その性質や周辺の地質によっては、CO2の移動経路を考えるうえで注意が必要になるためです。

とくに活断層については、位置・延び方・周辺の地層との関係を調べ、貯留地点の検討に反映します。

石油や天然ガスの開発、温泉掘削、調査などで作られた古い井戸も、記録を確認する対象です。

井戸は適切な構造や状態が維持されているかによって評価が変わるため、所在地や掘削時の資料、封止状況などを確認します。

確認対象 主な確認内容
活断層・断層 位置、分布、地層との交わり方、周辺の地質構造を確認します。
古い井戸 掘削位置、深さ、利用履歴、封止に関する記録を確認します。
既存の地下利用 地下資源開発や地下水利用など、周辺の利用状況との関係を確認します。

こうした確認を重ねることで、CO2を貯留する地層だけでは見えにくい地下の条件まで把握しやすくなります。

CCSの候補地は、貯留層・遮へい層・地質構造・人工的な掘削履歴を総合的に評価し、複数の条件を満たした場所に限って検討される仕組みです。

地震・断層・圧入井の影響は事前調査と圧力管理で抑える

CCSのCO2は地下からなぜ漏れない?仕組みと安全対策を解説

CCSでは、地震や断層、圧入井がCO2の移動経路にならないよう、圧入前の詳しい地質調査と、圧入中の圧力管理を組み合わせます。

地下にCO2を入れる量や速度を地層の状態に合わせて調整し、問題が起こりやすい場所を避けることで、地層や井戸への影響を抑える考え方です。

地下深部の状態は場所ごとに異なるため、一律の方法ではなく、個別の地質条件に応じて計画を立てることが重要です。

地震による地層への影響を地質データから評価する

地震が起きる地域では、地層がどの程度揺れやすいか、断層がどこにあるか、過去にどのような地震があったかを確認します。

こうした情報は、地震の記録、地層の観測データ、地下構造を調べる探査結果などをもとに整理されます。

特に確認されるのは、CO2を入れる地層と、その周辺にある断層や岩盤の性質との関係です。

地震によって地層が変形した場合でも、遮へい層が十分に連続しているか、地下の圧力がどう変わり得るかをあらかじめ検討します。

また、地下に流体を圧入すると、地層内の圧力変化が断層の動きに関係する可能性が指摘されています。

そのためCCSでは、自然に起こる地震だけでなく、圧入に伴う地層への影響も考慮して計画を作成します。

確認する項目 主な目的
過去の地震記録 地域の地震活動の傾向を把握します。
地下の断層分布 圧入地点との距離や位置関係を確認します。
岩盤・地層の性質 圧力変化に対する地層の反応を見積もります。
地下の初期圧力 無理のない圧入条件を検討する基準にします。

地震の発生を完全に予測することは簡単ではありませんが、事前に得られる地質データを使って、影響を受けにくい条件を選ぶことはできます。

地震リスクをゼロと決めつけず、想定される変化を評価したうえで圧入条件を定めることが、安全性を考えるうえでの基本になります。

断層を避けてCO2の圧入地点と圧力を決める

断層は地下の岩盤にずれが生じた境界であり、場所や状態によっては流体の移動に関わることがあります。

このため、CCSの圧入地点は、確認された断層から十分な関係を検討できる位置に設け、断層へ大きな影響が及ばないように計画されます。

単に断層から距離を取るだけでなく、断層の向き、深さ、広がり、地層との接し方なども判断材料になります。

圧入時には、CO2によって地層内の圧力が上がりすぎないよう、圧入量と圧入速度を管理します。

圧力が必要以上に高くなると、地層や断層にかかる力のバランスが変化する可能性があるためです。

  • 圧入する地層の深さや厚さに合った圧入計画を作ります。
  • 地下の圧力が許容範囲を超えないよう、圧入量を調整します。
  • 断層に近い場所や地質の不確実性が大きい場所は、慎重に評価します。
  • 計画した条件から外れる兆候があれば、圧入条件を見直せるようにします。

圧入圧力は高ければよいものではなく、CO2を地層に行き渡らせつつ、地層へ過度な負担をかけない範囲に保つ必要があります。

そのため、試験的な圧入や地下のデータ解析を通じて、地点ごとに適した運転条件を検討します。

断層の状態と地下圧力を切り離して考えず、両方を合わせて管理することが大切です。

圧入井は多重構造やセメントで密閉し閉鎖後も管理する

CO2を地下へ送る圧入井は、地上と深部の貯留層をつなぐ設備であるため、設計・施工・維持管理を丁寧に行う必要があります。

井戸には鋼製の管を何重にも設置し、その周囲をセメントで固めることで、CO2が通る経路と他の地層を分ける構造が採用されます。

この多重のバリアによって、CO2や地層水が意図しない層へ移動しにくい状態をつくります。

構成要素 主な役割
鋼製の管 CO2を目的の深さまで安全に通す経路になります。
セメント 管と周囲の地層のすき間を埋め、層どうしを隔てます。
井戸口の装置 圧入量や圧力を調整し、必要時に流れを止めます。
閉鎖用の栓 圧入を終えた井戸を長期的に封止するために使われます。

圧入中は、井戸の内部や周囲に異常がないかを確認し、設備の状態に応じて点検や補修を行います。

圧入を終えたあとも、井戸をそのままにするのではなく、規定に沿って封止し、必要な管理を続けることが求められます。

閉鎖後の井戸についても、封止した部分の健全性や周辺環境への影響を確認できるよう、記録を残して管理することが重要です。

CO2を地層へ入れる工程だけでなく、井戸を閉じた後まで見据えて設計することが、CCSの信頼性につながります。

地下のCO2は弾性波探査や各種センサーで継続的に監視する

CCSのCO2は地下からなぜ漏れない?仕組みと安全対策を解説

CCSでは、圧入したCO2が地下のどこにあり、どのように広がっているかを継続的に確認します。

弾性波探査、圧力計、温度計、地下水の観測などを組み合わせることで、地下の状態を多角的に把握する仕組みです。

単一の測定結果だけで判断せず、圧入前に取得した基準データと比較しながら、想定した範囲でCO2が管理されているかを確かめます。

弾性波探査でCO2の位置と広がりを把握する

弾性波探査は、人工的に発生させた小さな振動が地下を伝わり、地層の境界で反射して戻る性質を利用する調査です。

地上や海上に設置した観測機器で反射波を記録し、地下の地層構造を画像のように表現します。

CO2が貯留層の岩石のすき間に入ると、その場所では弾性波の伝わり方がわずかに変化します。

この変化を読み取ることで、CO2が存在するおおよその位置や広がり方を推定できます。

とくに重要なのが、圧入前と圧入中・圧入後に同じ場所を繰り返し調べる繰り返し弾性波探査です。

時期ごとのデータを比較すると、貯留層内でのCO2の分布の変化を追いやすくなります。

地下の状態を一度だけ確認するのではなく、時間の経過とともに見比べることが、監視の精度を高めるポイントです。

確認する内容 弾性波探査で分かること
CO2の分布 貯留層内のどの範囲に変化が見られるかを推定します。
広がり方の推移 調査時期ごとの画像を比較し、分布の変化を確認します。
地層の状態 貯留層やその上部にある地層の構造を継続して把握します。

ただし、弾性波探査の結果だけで地下のすべてを直接見られるわけではありません。

地層の性質や観測条件による見え方の違いもあるため、次に紹介する圧力や温度などのデータと照らし合わせて評価します。

圧力・温度・地下水の変化から異常の兆候を調べる

地下の観測井や圧入設備には、圧力や温度を測る機器が設置されます。

圧入量と地下の圧力変化を継続して記録することで、計画時に想定した運転状態から大きく外れていないかを確認します。

温度も、CO2や地層内の流体の状態を理解するための大切な情報です。

また、貯留層より浅い位置にある地下水について、水位や水質を定期的に確認する場合があります。

観測項目は地点の地質や周辺環境に合わせて選ばれ、採取したデータは過去の値や自然な変動幅と比較されます。

数値の変化を見つけたときは、単なる一時的な揺らぎか、詳しい確認が必要な変化かを慎重に見極めます。

  • 地下の圧力が計画した範囲で推移しているか
  • 温度の変化が地下の状況と整合しているか
  • 観測井の水位や水質に継続的な変化がないか
  • 弾性波探査による分布の推定と計測値に矛盾がないか

このように複数の観測結果を組み合わせると、ひとつのデータだけでは判断しにくい地下の変化も捉えやすくなります。

観測の頻度や期間は、圧入の規模、地質条件、事業計画に応じて設定されます。

海底下では海水や海底の状態も観測する

海底下にCO2を貯留する場合は、地下のデータに加えて、海水や海底の状態も観測対象になります。

海上や海底に設置した観測機器、採水調査などを通じて、海水の性質や海底付近の状態に変化がないかを確認します。

たとえば、水温、塩分、酸性・アルカリ性の度合い、溶存成分などは、周囲の海域の自然な変動も考慮しながら記録されます。

海の状態は潮の流れ、季節、天候によっても変わるため、短期間の数値だけで結論を急がないことが大切です。

複数地点での観測や過去の記録との比較により、自然な変化と区別しながら状況を評価します。

地下・海底・海水を一体として見守ることが、海底下CCSにおける継続的な管理につながります。

想定外の移動が見つかった場合に備えて対応計画を整える

CCSのCO2は地下からなぜ漏れない?仕組みと安全対策を解説

CCSでは、地下のCO2に計画と異なる動きが見られた場合を想定し、圧入を止める判断基準や連絡体制、確認手順をあらかじめ整えておくことが大切です。

状況に応じて圧入量や圧力を見直し、追加調査で原因と範囲を確かめたうえで、必要な対応を選びます。

早く気づき、段階的に対応できる仕組みを用意することで、周辺環境への影響を抑えながら安全性を確認しやすくなります。

人や生態系への影響はCO2の量・濃度・場所によって異なる

CO2は空気中にも自然に含まれる成分ですが、限られた空間に高い濃度で集まると、人や動物の呼吸に影響するおそれがあります。

そのため、地下から地表付近へ移動した可能性を確認する際は、単にCO2が検出されたかどうかだけでなく、量、濃度、発生場所、周囲の地形や利用状況を総合的に見ます。

たとえば、風通しのよい屋外と、くぼ地・建物内・地下空間のように空気がたまりやすい場所では、確認すべき点が異なります。

農地、森林、河川、海域などでは、植物や土壌、水中の生き物への影響を考える必要があります。

海底下の場合も、海水に溶け込むCO2の量や周辺の水質変化の可能性を踏まえ、対象海域の特性に合わせて評価します。

確認する視点 主な確認内容
CO2の状態 濃度、広がり、変化の速さ、継続時間
場所の特性 人の立ち入り状況、地形、換気のしやすさ、周辺施設
自然環境 植物、土壌、地下水、海水、生き物への変化の有無
影響の範囲 確認地点の周辺へ広がる可能性と、追加確認が必要な区域

こうした情報を整理することで、必要以上に不安を広げず、人の安全確保を優先した対応につなげられます。

圧入の停止や圧力調整などで原因に応じて対応する

計画と異なる変化が疑われる場合は、まず圧入作業を一時的に止める、または量を減らすといった対応を検討します。

圧入を続けながら判断を急ぐのではなく、地下の状態を確認し、変化の原因に合わせて次の行動を決める考え方です。

対応は一律ではなく、観測値の小さな変動なのか、設備の点検が必要な状態なのか、より広い範囲の確認が必要なのかによって変わります。

  • 圧入を一時停止し、状況の変化を確認する
  • 圧入量や運転条件を見直す
  • 井戸や配管などの設備を点検する
  • 関係機関や地域の関係者へ必要な情報を共有する
  • 周辺への立ち入りに配慮しながら安全確認を進める

特に、作業を止める基準や誰が判断するかを事前に明確にしておくと、緊急時にも対応が遅れにくくなります。

また、対応後に状況が落ち着いたように見えても、すぐに通常運転へ戻すのではなく、原因の確認と再発防止策の検討を行うことが重要です。

監視結果を基に追加調査や必要な対策を行う

想定外の移動が疑われたときは、得られた情報を基に追加調査を行い、地下で何が起きているのかをできるだけ丁寧に確かめます。

ひとつの数値だけで結論を出さず、地質データ、井戸の状態、周辺の環境データなどを照らし合わせることで、自然な変動との違いを判断します。

追加調査の結果、対応が必要と判断された場合は、圧入計画の変更、設備の補修、確認範囲の拡大など、状況に合った対策を進めます。

対応の流れは、次のように整理できます。

  1. 計画値と異なる変化を確認する
  2. 圧入の停止または条件の見直しを判断する
  3. 追加調査で原因と影響範囲を確認する
  4. 必要な安全対策や設備対応を実施する
  5. 結果を記録し、対応計画や運用方法を見直す

調査や対応の内容を記録し、次の計画へ反映することも欠かせません。

こうした改善を重ねることで、CCSは地下にCO2を貯留するだけでなく、変化に備えながら長期的に管理する仕組みとして運用されます。

時間がたつほど溶解や鉱物化が進みCO2は動きにくくなる

CCSのCO2は地下からなぜ漏れない?仕組みと安全対策を解説

地下に圧入されたCO2は、時間の経過とともに地層の隙間に取り残され、地層水に溶け込み、条件によっては鉱物の一部として固定されていきます。

そのため、圧入直後から長期にわたって固定の仕組みが段階的に働き、CO2が地層内を自由に移動し続ける状態にはなりにくいと考えられています。

ただし、進む速さや固定される割合は地層ごとに異なるため、地下の性質を事前に調べたうえで、長い目で状態を確かめることが大切です。

地層の隙間に取り残される作用は圧入後から進む

CO2が地層へ入ると、砂岩などにある細かな隙間を通って広がります。

このとき、隙間の中には地層水も存在しており、CO2が移動する過程で一部が小さな粒状に分かれて閉じ込められます。

この働きは「毛細管力」によるもので、スポンジに含まれた水が細かな穴に保持されるイメージに近いものです。

隙間に取り残されたCO2は、まとまって上方へ移動しにくくなります。

こうした固定は、圧入を終えた直後から比較的早い段階で始まることが特徴です。

ただし、どの程度取り残されるかは、岩石の粒の大きさ、隙間のつながり方、地層水の量などによって変わります。

固定の仕組み 主な内容 進み方の目安
構造による保持 上部の遮へい層によって上向きの移動が抑えられる 圧入中から働く
隙間への取り残し CO2が細かな隙間に分かれて保持される 圧入後から進む
地層水への溶解 CO2が地下水に溶け込む 長い時間をかけて進む
鉱物としての固定 岩石成分と反応して安定した鉱物の一部になる 地質条件により大きく異なる

地層水への溶解には長い時間がかかる

地層の隙間にある水には、CO2が少しずつ溶け込みます。

水に溶けたCO2は、気体や液体に近いまとまりとして動く場合とは性質が変わるため、浮力によって上へ移動しようとする力が小さくなります。

また、CO2を多く含んだ水は周囲の地層水より重くなることがあり、条件によってはゆっくり下方へ広がることもあります。

ただし、溶解はすぐに完了するわけではありません。

CO2と地層水が接する面積、水の流れやすさ、地下の温度や圧力などが関係するため、数十年からさらに長い時間をかけて進む場合があります。

溶解に時間がかかるからこそ、ほかの固定作用と組み合わせて、段階的にCO2を動きにくくしていくことが重要になります。

鉱物として固定されるまでの期間は地質条件で異なる

地層水に溶けたCO2は、周囲の岩石に含まれるカルシウム、マグネシウム、鉄などの成分と反応することがあります。

反応が進むと、炭酸塩鉱物などの安定した鉱物として固定される可能性があります。

これは、CO2が地層の隙間に存在する状態や水に溶けた状態から、岩石の構成要素の一部になる仕組みです。

鉱物化が進んだCO2は、地下で移動しにくい形に変化します。

一方で、鉱物化の速さはすべての地点で同じではありません。

  • 反応しやすい鉱物が地層に含まれているか。

  • 地層水が十分に存在するか。

  • 地下の温度や圧力が反応に適した条件か。

  • 水と岩石、CO2が接触しやすい構造か。

たとえば、火山岩の一種である玄武岩のように特定の成分を多く含む岩石では、鉱物化が比較的進みやすいとされることがあります。

反対に、鉱物化がゆっくり進む地層もあるため、短期間での固定だけを前提にせず、複数の仕組みを総合して評価します。

長期的な安全性は地点ごとの予測と監視で確かめる

CO2の溶解や鉱物化は地下深くで進むため、地上から直接見ることはできません。

そこで、地層の構造、岩石の性質、地層水の成分などを基に、CO2が将来どのように広がり、どの固定作用がどの程度見込めるかを予測します。

予測では、ひとつの結果だけを採用するのではなく、地質条件の幅を考慮して複数の可能性を確認します。

そのうえで、圧入後に得られる地下のデータと予測を照らし合わせ、想定した範囲でCO2が安定しているかを継続的に確かめます。

特に大切なのは、「時間がたてば必ず固定される」と一律に考えず、その地点の地質に合った見通しを持つことです。

隙間への取り残し、地層水への溶解、鉱物化という複数の働きを丁寧に評価することで、CCSにおける長期的な安定性を判断しやすくなります。

海底下CCSも陸上と同じ地質条件を確認して実施する

CCSのCO2は地下からなぜ漏れない?仕組みと安全対策を解説

海底下CCSでは、CO2を海水中へ放出するのではなく、海底よりさらに深い地下の安定した地層に貯留します。

そのため、陸上のCCSと同じように、CO2を受け入れる地層と上部で移動を抑える地層がそろっているかを確認したうえで実施します。

海で行うから安全性の考え方が異なるのではなく、地下の地質構造を詳しく把握することが基本です。

CO2を海中ではなく海底よりさらに深い地層へ貯留する

海底下CCSでCO2を送り込む先は、海底面のすぐ下ではありません。

一般には、海底からさらに深い場所にある、砂岩などの細かな隙間を持つ地層が候補になります。

その上には、泥岩のように流体を通しにくい地層が重なっていることが重要です。

この上部の地層がフタの役割を果たし、CO2が上方向へ移動しにくい状態をつくります。

海水の深さと地下の貯留深さは別のものなので、海上から見て水深が深い場所であっても、実際にはその下の地層構造を個別に調べる必要があります。

確認する場所 主な役割
海底 海水と海底下の地層の境目
貯留層 CO2を岩石の隙間に受け入れる地層
遮へい層 CO2の上方への移動を抑える地層

候補地点では、海底の地形だけで判断せず、地下にどのような地層が重なり、横方向にどこまで続いているかを確認します。

また、貯留層の広がりや岩石の性質を把握し、予定する量のCO2を受け入れられる見込みがあるかも評価します。

「海底下ならどこでも貯留できる」わけではないため、条件に合う地点を慎重に選ぶことが欠かせません。

海底まで続く断層や既存井戸の有無を事前に調べる

海底下の地下には、地層のずれである断層や、過去の資源開発などで掘られた井戸が存在する場合があります。

こうした構造がCO2の移動経路にならないかを確かめるため、事前に広い範囲の地下構造を調査します。

特に、貯留層から海底付近まで連続している可能性がある断層については、位置や性質を丁寧に確認します。

既存井戸がある地域では、井戸の場所、深さ、使われていた時期、閉鎖時の状態などを可能な範囲で調べます。

  • 海底地形と地下の地層のつながりを確認します。

  • 断層の位置や広がりを把握します。

  • 過去に掘削された井戸の記録を確認します。

  • 貯留を予定する範囲から十分に距離を取れるかを検討します。

調査の結果、地下構造が複雑で評価が難しい場所や、既存井戸の状態を十分に確認できない場所は、候補から外す判断につながることがあります。

海底下CCSでは、海上の設備だけを見るのではなく、見えない地下の情報を積み重ねて地点を選ぶことが大切です。

地質データには不確かさが残る場合もあるため、ひとつの調査結果だけに頼らず、複数の手法や記録を照合して評価します。

海中への移動を想定した監視体制を設ける

海底下CCSでは、CO2が計画した地下の範囲にとどまっているかに加え、海底や海水への想定外の移動がないかを確認できる体制を整えます。

監視は圧入している期間だけでなく、その後も計画に沿って続けられます。

海底下では地上から直接観察しにくいため、海上からの観測、海底に設置する機器、地下の測定結果などを組み合わせることがあります。

監視の対象 確認する内容の例
地下の貯留範囲 CO2が予測した範囲で分布しているか
海底周辺 地形や海底付近の状態に変化がないか
海水 観測地点の水質に通常と異なる傾向がないか
圧入設備 圧力や流量が管理範囲内にあるか

観測で気になる変化が確認された場合は、追加調査を行い、地下で起きている状況を慎重に見直します。

必要に応じて圧入条件を調整したり、圧入を止めたりできるよう、あらかじめ対応の流れを用意しておくことも重要です。

このように海底下CCSは、海という環境に合わせた観測を加えながら、地層の選定・事前確認・継続的な監視を一体で行う仕組みになっています。

苫小牧CCS実証試験では圧入後もCO2の状態を監視している

CCSのCO2は地下からなぜ漏れない?仕組みと安全対策を解説

苫小牧CCS実証試験では、海底下の地層にCO2を圧入した後も、地下で計画どおりに分布しているかを継続して確認しています。

地下の様子は直接見えないため、弾性波探査・井戸内の測定・海洋環境調査など、複数の方法で得たデータを照らし合わせる仕組みです。

この実証試験で積み重ねられた記録は、国内でCCSを検討する際の重要な知見として活用されています。

海岸から海底下の貯留層へCO2を圧入した

苫小牧CCS実証試験は、北海道苫小牧市で行われた国内初の大規模なCO2貯留に関する実証試験です。

製油所から発生するガスからCO2を分離・回収し、海岸近くに設けられた設備から地下深くへ送りました。

CO2は陸上から掘削した井戸を通り、海底下にある複数の貯留層へ圧入されています。

2016年から2019年にかけて、累計約30万トンのCO2が圧入されました。

圧入先には深さや性質が異なる地層が用いられ、地下約1,000メートル付近の地層と、約2,400メートル付近の地層が対象となりました。

実証試験では、CO2を地下へ送ること自体だけでなく、圧入後にどのように広がり、どのような状態でとどまっているかを確認することが大きな目的でした。

項目 苫小牧CCS実証試験で行われた内容
CO2の回収 事業所から出るガスを処理し、CO2を分離・回収する
地下への圧入 陸上の井戸から海底下の貯留層へCO2を送る
圧入後の確認 地下のCO2の分布や周辺環境の状態を継続して調べる

弾性波探査や海洋環境調査を組み合わせて確認した

地下に圧入されたCO2の分布を確認する方法のひとつが、弾性波探査です。

弾性波探査では、地下へ伝わる波の反射の違いを利用して、地層内部の状態を把握します。

圧入前に取得したデータと圧入後のデータを比較することで、CO2が想定した貯留層の範囲に存在しているかを確認します。

苫小牧では、陸上や海上からの探査に加え、観測井で得られる圧力や温度などの情報も確認されました。

ひとつの測定結果だけで判断せず、異なる種類のデータを組み合わせて地下の状況を評価することがポイントです。

また、海底下へ圧入する取り組みであることから、海洋環境に関する調査も行われました。

海水や海底の堆積物などを調べ、調査地点の状態に通常と異なる変化がないかを確認する取り組みが続けられています。

  • 弾性波探査:地下にあるCO2の広がり方を把握するための調査です。

  • 井戸での測定:貯留層周辺の圧力や温度などを確認します。

  • 海洋環境調査:海水や海底付近の状態を継続的に確認します。

  • データの比較:圧入前後や過去の観測結果と比べて変化を慎重に見ます。

2018年に北海道胆振東部地震が発生した際にも、苫小牧CCS実証試験では観測データの確認や追加の調査が行われました。

その後に公表された報告では、貯留したCO2の挙動に関して特段の異常は確認されなかったとされています。

こうした出来事の後にもデータを確認する姿勢は、圧入が終わった後も管理を続ける重要性を示すものといえます。

国内のCCS事業に向けて監視データと知見を蓄積している

苫小牧CCS実証試験の価値は、CO2を地下へ圧入した実績だけではありません。

地質データの集め方、設備の運用方法、観測結果の読み取り方、地域との対話の進め方など、将来のCCS事業に役立つ多くの経験が蓄積されています。

特に、圧入後のCO2を長期的にどのように確認していくかは、CCSへの理解を深めるうえで欠かせないテーマです。

苫小牧で得られたデータは、国内の地質条件に合わせた評価方法や監視計画を考える際の参考になります。

ただし、地下の地質構造や周辺環境は場所ごとに異なるため、苫小牧の結果をそのまま別の地域へ当てはめることはできません。

新たな地点でCCSを行う場合は、その地域の地層や海域・陸域の特性に応じて、あらためて調査と評価を進める必要があります。

苫小牧CCS実証試験は、CO2を圧入した後も観測を続け、得られた情報を次の取り組みに生かすという、国内CCSの基盤となる役割を担っています。

まとめ

この記事のポイントをまとめます。

  • CCSのCO2が漏れにくい理由は、上部の遮へい層がフタのように働くためです。
  • CO2は一般に地下約1,000~3,000メートルの深い地層へ圧入されます。
  • 貯留層と遮へい層がそろい、長期的な貯留に適した地点だけが選ばれます。
  • 地震や断層、井戸の影響は、事前の地質調査と圧力管理で確認・抑制します。
  • 弾性波探査や各種センサーを用いて、CO2の位置や広がりを継続的に監視します。
  • 想定と異なる動きがあれば、圧入停止や追加調査などを段階的に行える計画を整えます。
  • 時間の経過とともに、CO2は地層水への溶解や鉱物化によって動きにくくなります。
  • 海底下CCSも陸上と同様に、海底より深い地層の性質を確認して実施されます。
  • 苫小牧CCS実証試験では、圧入後も複数の方法で地下や海洋環境の状態を確認しています。

CCSは、CO2を地下へ入れるだけの技術ではなく、地層を慎重に選び、圧入中と圧入後も状態を確かめ続ける仕組みです。

地下のことは見えにくいため不安に感じるかもしれませんが、地質調査、圧力管理、継続監視、対応計画を重ねて、長期的な管理につなげる考え方が取られています。

「なぜ漏れないのか」を知ると、CCSは地層の性質と観測技術を組み合わせて進める取り組みだと理解しやすくなります。

気になるニュースや地域の計画に触れたときは、貯留場所の条件や監視方法にも目を向けてみてください。

タイトルとURLをコピーしました