自動運転について調べていると、「LiDARとカメラは何が違うの?」「どちらか一方だけで周囲を見られるの?」と気になる方も多いのではないでしょうか。
どちらも車の周囲を認識するための重要なセンサーですが、LiDARは距離や立体的な形、カメラは色・文字・模様などの見た目の情報を捉えやすいという違いがあります。
さらに、夜間・逆光・雨や霧といった走行環境によっても、得意なことと注意したい点は変わります。
この記事では、LiDARとカメラの仕組みや役割をわかりやすく比較しながら、ミリ波レーダーを含めた複数センサーの連携についても解説します。
「自動運転車は周囲をどのように見て、判断しているのか」を理解したい方は、ぜひ続きを読んでみてください。
この記事でわかること
- LiDARとカメラが取得する情報と、それぞれの得意分野
- LiDARとカメラによる距離の捉え方の違い
- 夜間・逆光・雨・霧・雪などで生じる見え方の特徴
- ミリ波レーダーやセンサーフュージョンが担う役割
LiDARは距離と立体形状、カメラは色や模様の識別が得意

自動運転で使われるLiDARとカメラは、どちらも周囲を把握するためのセンサーですが、取得する情報の種類が異なります。
LiDARは対象物までの距離や空間の立体的な形を捉えやすく、カメラは色・文字・模様など見た目の情報を読み取りやすいという違いがあります。
人の目にたとえると、カメラは景色の見え方を画像として記録する役割で、LiDARは周囲にある物の位置を立体的に測る役割に近いものです。
| 項目 | LiDAR | カメラ |
|---|---|---|
| 主に取得する情報 | 距離、位置、立体形状 | 色、明暗、文字、模様、輪郭 |
| 情報の表し方 | 点の集まりによる三次元的なデータ | 二次元の画像 |
| 把握しやすい対象の例 | 車両、壁、縁石、道路上の障害物の位置 | 信号の色、標識の表示、車線の見え方 |
LiDARはレーザー光の反射から周囲までの距離を測る
LiDARは、レーザー光を周囲へ照射し、物に当たって戻ってくるまでの時間などをもとに距離を求めるセンサーです。
光が戻ってきた情報を多数集めることで、車の周囲にある物体を点の集まりとして立体的に表現できる点が大きな特徴です。
たとえば前方に車両やガードレール、縁石などがある場合、それぞれがどのあたりにあり、どのような高さや幅を持つかを把握するための情報になります。
このようなデータは一般に点群データと呼ばれ、平面だけでは分かりにくい奥行きや高低差を扱いやすいことがメリットです。
ただし、LiDARが取得する情報だけでは、対象物の表面にある色や文字の内容までは分かりにくい場合があります。
たとえば同じ形状の看板でも、そこに書かれた案内や表示の意味を読み取るには、別の種類の情報が役立ちます。
カメラは可視光から画像情報を取得する
カメラは、人が目で見ている光に近い可視光を受け取り、周囲の様子を画像として取得します。
赤・青・黄などの色、道路標識の文字や記号、路面に描かれた線といった視覚的な特徴を捉えやすいことがカメラの強みです。
たとえば信号機の点灯状態や、一時停止を示す標識、道路上の白線・黄線などは、画像に含まれる色や形、模様から認識する対象になります。
カメラが取得するのは基本的に二次元の画像なので、画像の中で対象がどこに写っているかは分かっても、奥行きを直接示す情報が常に含まれるわけではありません。
そのため、複数のカメラ画像の見え方の差を利用したり、画像処理によって大きさや位置関係を推定したりする方法が用いられます。
カメラの性能は、レンズの画角、画像の細かさ、設置する高さや向き、フロントガラスの汚れなど、搭載環境からも影響を受けます。
検知距離や精度は製品と搭載条件によって異なる
LiDARとカメラの性能は、センサーの種類だけで一律に決まるものではありません。
同じLiDARでも、発するレーザー光の方式や測定できる点の細かさ、視野の広さによって、取得できる情報の密度は変わります。
カメラも、画像の細かさ、明るさへの対応範囲、レンズの種類、画像を解析する仕組みによって、捉えやすい対象が異なります。
さらに、センサーの取り付け位置や角度、車体の形状、窓やレンズカバーの状態も、周囲を見渡す範囲に関わります。
「LiDARなら必ず遠くまで正確」「カメラなら近距離しか見られない」と単純に分けられるわけではありません。
センサーを比較するときは、方式だけを見るのではなく、想定される使用環境や車両への搭載方法を含めて確認することが大切です。
自動運転ではLiDARとカメラが異なる認知を担う

自動運転では、LiDARとカメラが同じものを見ているわけではなく、それぞれ得意な情報を持ち寄って周囲の状況を認識します。
LiDARは物体の位置や立体的な形を捉える役割、カメラは信号・標識・道路表示の意味を読み取る役割を担うのが基本です。
車両は取得した情報をもとに、「前方に何があるか」「これからどう動きそうか」「どのように進むべきか」を順番に考え、加速・減速・操舵につなげます。
| 認知したい情報 | 主に役立つセンサー | 自動運転での活用例 |
|---|---|---|
| 周囲の物体の位置や形状 | LiDAR | 前方車両、歩行者、自転車、縁石などの配置を把握する |
| 色・文字・記号・模様 | カメラ | 信号の灯火、規制標識、車線、横断歩道を見分ける |
| 道路上の状況の意味 | LiDARとカメラ | 障害物の有無と交通ルールを踏まえ、走行方針を決める |
LiDARは車両や歩行者の位置と形状を立体的に捉える
LiDARは周囲にレーザー光を照射し、戻ってくるまでの情報から、物体が存在する場所を立体的な点の集まりとして取得します。
この情報を解析すると、前方にある車両、道路脇の構造物、歩行者らしき対象などが、車両の周囲にどのように配置されているかを把握する材料になります。
たとえば交差点に進入する場面では、自車の進行方向にどの物体があり、どの空間が通行できそうかを整理するために使われます。
道路の脇に停車している車両や、車道へ近づく歩行者などを認識する際にも、対象の輪郭や周辺との位置関係が判断材料になります。
ただし、LiDARが取得する点の集まりだけでは、それが乗用車なのか看板なのか、あるいは信号のどの灯火が点いているのかといった意味まで、十分に読み取れない場合があります。
そこで、形状や位置の情報を得意とするLiDARと、見た目の意味を捉えやすいカメラを役割分担させる考え方が用いられます。
カメラは信号の色や標識、白線を見分ける
カメラは人の目に近い画像情報を取得できるため、周囲にある色、文字、図柄、線の形などを読み取ることに向いています。
自動運転で特に重要なのは、進行してよいか、注意すべきかを示す交通情報を見分けることです。
具体的には、信号機の灯火、停止や進行方向を示す標識、制限に関する表示、横断歩道、車線を区切る線などが認識の対象になります。
たとえば前方の信号機を見つけても、LiDARの情報だけでは、赤・黄・青のどの表示なのかを判断しにくいことがあります。
カメラ画像を解析すれば、信号の点灯状態や標識の図柄を読み取り、道路上のルールを走行判断に反映しやすくなります。
また、白線や矢印などの路面表示は、走行する車線や進行方向を確認するうえで大切な情報です。
カメラは道路の見た目から車線の境界を捉え、車両が意図した位置を走れるようにするための情報を提供します。
- 信号機:灯火の色や表示内容を確認する
- 道路標識:停止、進行方向、規制に関する情報を読み取る
- 白線・車線:走行位置や車線変更時の目安にする
- 横断歩道:歩行者が通行する可能性がある場所として把握する
取得した情報は予測・判断・操作につながる
LiDARやカメラが集めた情報は、単に画面上に周囲を映し出すためだけのものではありません。
自動運転の仕組みでは、認識した対象の状態を整理したうえで、次に起こりそうな動きを予測し、走行方法を決める流れにつながります。
たとえば、LiDARで前方に歩行者と考えられる対象を捉え、カメラで横断歩道や歩行者用信号を確認できれば、車両は周囲の状況をより具体的に理解する材料を得られます。
その後、歩行者が車道へ進む可能性、先行車が減速する可能性、信号に応じて停止が必要かといった点を考慮して、走行計画を組み立てます。
- 周囲の車両・歩行者・道路設備を認識する
- 対象の位置や進行方向、道路上のルールを整理する
- 周囲の動きと自車の進路を予測する
- 進む・減速する・停止する・曲がるといった方針を決める
- アクセル、ブレーキ、ハンドルの操作へ反映する
このように、LiDARとカメラはそれぞれ別の情報を扱いながら、車両が周囲を理解するための土台をつくっています。
立体的な位置関係と、交通情報が持つ意味の両方を捉えることが、安全に配慮した走行判断を目指すうえで重要になります。
距離測定はLiDARが得意だがカメラでも対応できる

自動運転で周囲との距離を把握する方法には、LiDARで直接測る方法と、カメラ画像から求める方法があります。
距離そのものを立体的に捉えやすいのはLiDARですが、カメラも単眼・ステレオといった方式により距離情報を得られます。
ただし、測定の考え方と得意な情報は異なるため、同じ「距離を知る」技術として扱うのではなく、仕組みの違いを理解しておくことが大切です。
| 方式 | 距離の求め方 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| LiDAR | レーザー光の往復時間などを利用する | 対象までの位置を3次元的に取得しやすい |
| 単眼カメラ | 1枚の画像にある見え方や学習結果から推定する | 構成が比較的シンプルで、画像の意味を読み取りやすい |
| ステレオカメラ | 左右のカメラに映る位置のずれを利用する | 人の両目に近い考え方で奥行きを求める |
LiDARは3次元の点群データから距離を直接捉えやすい
LiDARは、周囲にレーザー光を照射し、反射して戻るまでの時間などを利用して、対象までの距離を計測するセンサーです。
得られた測定結果は、多数の点の集まりである「点群データ」として表現されます。
各点には車両から見た位置情報が含まれるため、前方の車、縁石、道路脇の構造物などが、どの方向にどの程度離れているかを立体的に捉えやすくなります。
たとえば前方に車両がある場合、LiDARは車両表面から得られる複数の点をもとに、対象までの距離やおおまかな形状を把握する材料を集めます。
画像上の大きさから奥行きを考えるのではなく、測定値をもとに距離を扱える点が、LiDARの大きな特徴です。
一方で、点群だけでは対象に書かれた文字や色のような細部を十分に読み取れない場合もあります。
そのため、LiDARの距離情報は非常に有用である一方、周囲の意味を詳しく理解するためには別の情報も必要になります。
単眼カメラは画像から距離を推定する
単眼カメラは、1台のカメラで撮影した画像を使い、対象までの距離を推定する方式です。
1枚の画像には直接的な奥行きの測定値が含まれないため、車両は対象の見かけの大きさ、道路上での位置、輪郭、重なり方などを手がかりにします。
たとえば、一般的な乗用車と考えられる対象が画像内で小さく映っていれば遠方にある可能性を、大きく映っていれば近くにある可能性を考えます。
また、道路の消失点や車線の広がり方、過去の画像との変化といった情報も、距離や近づき方を推定する材料になります。
近年は、多くの画像データをもとにした学習技術を活用し、画像中の対象や場面の特徴から奥行きを推定する考え方も用いられています。
ただし、単眼カメラの距離把握は、対象の種類や画像の写り方に影響されるため、常に実測値と同じように扱えるわけではありません。
それでも、カメラはすでに取得している画像の中から距離に関する手がかりを得られるため、限られた構成で周囲を把握するうえで役立つ方法です。
ステレオカメラは左右の画像差を利用して距離を測る
ステレオカメラは、少し離して配置した2台のカメラで同じ対象を撮影し、左右の画像に生じる見え方のずれから距離を求めます。
これは、人が左右の目で見える位置の違いを利用して、物の近さや遠さを感じる仕組みに近い考え方です。
近くにある対象ほど左右の画像で位置のずれが大きくなり、遠くにある対象ほどずれが小さくなる傾向があります。
車両のシステムは、このずれを対応づけて計算することで、画像に奥行き情報を加えていきます。
- 左右の画像で同じ対象を見つける
- 対象が映る位置のずれを調べる
- カメラ同士の間隔や撮影条件をもとに奥行きを計算する
- 距離情報を含む画像として周囲の配置を整理する
単眼カメラよりも幾何学的な手がかりを使いやすいことから、ステレオカメラは画像を利用しながら距離を求める方法として知られています。
ただし、左右の画像で同じ箇所を正しく対応づける必要があり、模様が少ない場所や似たような見え方が続く場面では、計算が難しくなることがあります。
カメラの取り付け位置や向きのずれも結果に関わるため、安定した距離推定には適切な調整が欠かせません。
細かな見え方の把握ではカメラが強みを持つ
距離の扱いやすさではLiDARに特徴がありますが、カメラには対象の細かな見え方を画像として取得できる強みがあります。
たとえば、前方の車両の種類、標識に書かれた文字、路面に描かれた矢印、信号の表示といった情報は、形だけでなく色や模様も重要です。
カメラはこうした視覚的な特徴を豊富に捉えられるため、距離だけでは判断しにくい違いを読み取る材料になります。
また、同じ位置にある物でも、人物、自転車、看板、落下物では走行時に考慮したい内容が変わります。
カメラ画像は、対象の外観を細かく確認することで、距離情報に「何があるのか」という手がかりを加えられます。
つまり、LiDARは位置や立体的な配置を把握しやすく、カメラは対象の見た目や表示内容を詳しく捉えやすいという違いがあります。
距離をどのように得るかと、対象をどこまで詳しく見分けられるかは別のポイントとして考えると、それぞれの特徴を理解しやすいでしょう。
夜間や逆光ではLiDARが比較的安定しやすく悪天候では双方に弱点がある

夜間や強い逆光の場面では、周囲の明るさに左右されにくいLiDARのほうが、距離や障害物の位置を捉えやすい傾向があります。
一方で、雨・霧・雪などではLiDARのレーザー光もカメラの視界も影響を受けるため、どちらか一方が常に見えやすいわけではありません。
天候や光の条件ごとに得意・不得意が変わる点を知っておくと、自動運転車がさまざまな環境に対応する難しさを理解しやすくなります。
カメラは暗さや逆光によって画像の見え方が変わる
カメラは、人の目と同じように周囲の光を利用して画像を取得するため、暗い場所では映像が見えにくくなることがあります。
夜間の道路では、街灯の少ない区間や黒っぽい服を着た歩行者などが背景に溶け込み、輪郭を捉えにくくなる場合があります。
また、夕方に太陽へ向かって走る場面や、対向車のヘッドライトが強く当たる場面では、画面の一部が明るくなりすぎることがあります。
このような逆光や反射光によって、標識の表示、信号の色、前方車両の細部などが読み取りにくくなることもあります。
カメラの性能は、撮影する場所の明るさと光の向きに影響されやすいことが特徴です。
近年は暗所に対応しやすい撮像素子や、明暗差を調整する画像処理も使われていますが、急な明るさの変化まで完全になくせるわけではありません。
| 場面 | カメラで起こりやすい見え方の変化 |
|---|---|
| 街灯が少ない夜道 | 対象の輪郭や色の違いが分かりにくくなる |
| 朝日・夕日を正面から受ける場面 | 画面の一部が白く見え、細部が捉えにくくなる |
| 濡れた路面やガラス面 | 光の反射が映り込み、対象との区別が難しくなる |
LiDARは自ら照射するレーザー光で夜間も測距できる
LiDARは周囲の光を待つのではなく、自らレーザー光を照射し、戻ってくるまでの情報を利用します。
そのため、周囲が暗い夜間でも、対象までの距離や位置を把握するための情報を得やすい点が特徴です。
たとえば、街灯が少ない道路でも、前方にある車両や道路脇の物体の位置関係を確認する材料になります。
強い日差しや逆光があるときも、画像の明るさそのものに大きく左右されるカメラと比べると、距離の計測は比較的安定しやすいといえます。
ただし、LiDARが取得する情報にも限界があり、対象物の表面状態や材質、レーザー光の反射のしやすさによって、捉え方が変わることがあります。
黒色で光を反射しにくい素材や、光沢のある面、複雑な形状の物体では、得られる情報が変化する可能性があります。
夜間に強みを持つからといって、どの対象でも同じように確認できるわけではない点には注意が必要です。
雨・霧・雪はレーザー光や視界に影響を与える
雨、霧、雪といった悪天候は、LiDARとカメラのどちらにとっても難しい条件です。
LiDARでは、空中の雨粒や霧の粒、水分を含んだ雪にレーザー光が当たり、途中で散乱したり反射したりすることがあります。
その結果、本来確認したい車両や歩行者より手前の粒子からの反応が増え、遠方の情報を得にくくなる場合があります。
特に濃い霧や激しい降雪では、レーザー光が進む空間そのものの状態が計測に影響することがあります。
カメラも雨粒や霧によってコントラストが下がり、対象の輪郭、色、文字などを見分けにくくなることがあります。
降雨時にはワイパーの動きや、濡れた路面からの反射光が画像に入り、映像の見え方が変わる点も考慮されます。
- 雨では、水滴や路面反射によって見え方が変化しやすい
- 霧では、遠方の対象ほど輪郭がぼやけやすい
- 雪では、空中を舞う雪や付着した雪が情報取得を妨げることがある
悪天候への対応を考える際は、単にセンサーの性能だけでなく、降り方や視界の状態、道路環境によっても影響が異なります。
汚れや水滴への対策も欠かせない
センサー本体の前面に泥、ほこり、虫、水滴、雪などが付着すると、LiDARもカメラも本来の情報を取得しにくくなります。
カメラのレンズ部分が汚れると、画像全体がぼやけたり、一部が隠れたりして、対象の見分けに影響することがあります。
LiDARの光を出し入れするカバーが汚れた場合も、レーザー光が弱まったり散乱したりする可能性があります。
そのため車両では、センサーの配置を工夫するほか、洗浄機構、空気を吹き付ける仕組み、発熱による曇りや凍結への対策などが検討されています。
性能を発揮するには、センサーそのものだけでなく、前面をきれいに保つ仕組みも重要です。
夜間や悪天候を含む幅広い走行環境では、光や天候、汚れによる変化を前提にして、安全に必要な情報を得られるよう工夫することが求められます。
ミリ波レーダーは速度検知と悪天候への対応を補うセンサー

ミリ波レーダーは、電波を使って前方や周囲の物体までの距離と、近づく・遠ざかる速さを捉えるセンサーです。
特に走行中の車両との相対速度を把握しやすいため、自動運転や運転支援において重要な役割を担います。
雨や霧などで光を使うセンサーの情報が変化しやすい場面でも、状況を捉えるための情報源になり得る点も特徴です。
ミリ波レーダーは電波の反射から距離や相対速度を捉える
ミリ波レーダーは、車両から発したミリ波帯の電波が物体に当たり、反射して戻るまでの情報を利用します。
反射波を解析することで、前方の車やガードレールなどがどの程度離れているかを推定します。
さらに、反射波の周波数の変化を利用すると、対象との相対速度も捉えられます。
この仕組みには、救急車の音程が近づくと高く、遠ざかると低く聞こえる現象と同じ、ドップラー効果が活用されています。
たとえば自車が前方の車に近づいているときは、単純な車間距離だけではなく、距離が縮まる速さを把握することが大切になります。
ミリ波レーダーはこうした変化を捉えやすく、先行車や周辺車両の動きを把握するための情報として用いられます。
| 捉えられる情報 | ミリ波レーダーの見方 |
|---|---|
| 距離 | 反射波が戻るまでの情報から推定 |
| 相対速度 | 反射波の周波数変化から把握 |
| 方位 | 電波が返ってきた方向から推定 |
| 対象の存在 | 電波を反射する物体として検知 |
電波は光とは異なる性質を持つため、雨や霧などの影響を受ける場面でも、対象との距離や動きに関する情報を得られる場合があります。
そのため、見通しが変わりやすい環境で速度情報を補う役割が期待されています。
ただし、強い雨や積雪、反射の仕方、周囲の構造物などによっては、レーダーの情報にも影響が出る可能性があります。
金属製の物体は電波を反射しやすい一方で、対象の材質や形状によって反射の強さが異なる点にも注意が必要です。
物体の細かな形や色の識別はLiDARやカメラが補う
ミリ波レーダーは距離や相対速度に強みがありますが、対象の細かな輪郭や色、文字まで詳しく見分ける用途には向きにくい面があります。
たとえば、前方にある物体が乗用車なのか、二輪車なのか、路上の落下物なのかを細かく分類するには、電波の反射情報だけでは判断材料が限られることがあります。
LiDARは、レーザー光の反射から周囲の立体的な形状を捉えることを得意とします。
カメラは、車両の色、信号の表示、道路標識の文字、白線の模様など、視覚的な意味を読み取る情報を得意とします。
ミリ波レーダーが「どの方向に、どのくらいの速さで動く物体があるか」を捉えやすいのに対し、LiDARやカメラは「それが何で、どのような形や表示をしているか」を確認するための情報を扱います。
なお、カメラで得られる画像から距離や動きを推定する技術もありますが、ミリ波レーダーとは情報の取得方法が異なります。
- ミリ波レーダー:距離や相対速度、物体の動きに関する情報
- LiDAR:周囲の立体形状や位置関係に関する情報
- カメラ:色、模様、文字、信号表示などに関する情報
3種類のセンサーは得意分野が重なりつつ異なる
ミリ波レーダー、LiDAR、カメラはいずれも周囲の状況を把握するために使われますが、得意とする情報は同じではありません。
たとえば前方の車両を捉えるという目的は共通していても、ミリ波レーダーは相対速度、LiDARは立体的な位置、カメラは車種らしい外観や表示といったように、注目する情報が異なります。
この違いを知っておくと、自動運転で複数のセンサーが検討される理由を理解しやすくなります。
また、センサーの性能は検知距離だけで決まるものではなく、どの情報をどの程度の確かさで取得したいかによって評価の視点も変わります。
ミリ波レーダーは、特に周囲の車両などとの距離変化や相対速度を捉える役割で、LiDARやカメラとは異なる価値を持つセンサーです。
LiDARだけでもカメラだけでもあらゆる状況への対応は難しい

LiDARとカメラはそれぞれ優れた情報を取得できますが、どちらか一方だけで、すべての道路環境や対象を十分に把握することは簡単ではありません。
自動運転では、走行する場所や想定する場面に合わせて、複数の認知手段や地図・測位情報を組み合わせる考え方が検討されています。
単独のセンサーには検知しにくい対象や環境がある
LiDARは周囲の形状や距離を立体的に捉えやすい一方で、対象物の色や文字、信号の点灯状態といった見た目の意味をそのまま読み取る用途には向きません。
たとえば、道路上にある標識らしい物体を検知できても、それが速度に関する案内なのか、一時停止を示す標識なのかを判断するには、別の情報が必要になる場合があります。
また、黒っぽい素材や光を反射しにくい対象、水たまりのように表面状態が変わりやすいものでは、反射光の受け取り方が一定にならないことがあります。
一方のカメラは、信号機の色、車線の線、標識の文字、歩行者の服装など、人が目で見て理解する情報に近い特徴を扱いやすいセンサーです。
ただし、画像は平面的な情報であるため、対象までの距離や奥行きを安定して推定するには、画像処理や複数台のカメラ配置などの工夫が求められます。
さらに、強い反射、レンズの汚れ、視界を遮る物体などによって、画像内の対象が見分けにくくなる場面も考えられます。
| 確認したいこと | LiDARで考慮したい点 | カメラで考慮したい点 |
|---|---|---|
| 標識や信号の内容 | 形状や位置は把握しやすいが、表示の意味は読み取りにくい | 色や文字を読み取りやすいが、見え方に左右されることがある |
| 細かな路面の状態 | 表面の反射特性によって捉え方が変わる場合がある | 模様や色の変化を確認しやすいが、影や照明の影響を受ける場合がある |
| 遠近関係 | 距離情報を得やすい | 画像からの推定には処理や配置の工夫が必要になる |
つまり、単独のセンサーで「見えている」と判断できても、それだけで対象の種類、位置、道路上での意味まで十分に確認できるとは限りません。
検知できることと、走行判断に必要な情報がそろうことは別です。
必要なセンサー構成は自動運転の方式や設計思想で変わる
必要とされるセンサーの種類や数は、すべての車両で共通ではありません。
たとえば、あらかじめ走行範囲を限定した移動サービスと、多様な道路環境での走行を想定する乗用車では、求められる周囲確認の範囲や条件が異なります。
高速道路を中心に考える場合と、歩行者や自転車、交差点が多い市街地を想定する場合でも、重視する情報は変わります。
そのため、LiDARを中心に周囲の形状を細かく確認する考え方もあれば、カメラによる画像認識を重視する考え方もあります。
また、センサーを車体のどこに配置するかによっても、死角になりやすい場所や確認できる範囲は変化します。
前方だけでなく、側方や後方、交差点での横方向など、どの方向をどの程度確認したいかを踏まえて構成を考える必要があります。
- 走行する道路の種類や範囲
- 想定する速度域や交通量
- 歩行者・自転車が多い環境かどうか
- 車両のデザインや搭載スペース
- 確認したい情報の種類と冗長性の考え方
このように、センサー構成に唯一の正解があるわけではなく、車両が目指す自動運転のあり方によって選択肢が変わります。
地図や測位情報も周囲の認知を支える
車両が周囲を理解するための手がかりは、搭載センサーだけではありません。
高精度な地図情報が利用できる環境では、車線の位置、交差点の形、信号機や標識が設置されている場所などを、あらかじめ走行の参考情報として扱えます。
測位情報を用いて車両自身の位置を把握できれば、取得した周囲の情報を地図上の道路構造と照らし合わせやすくなります。
たとえば前方にある設備を捉えた際、地図上の情報と位置が対応していれば、その設備が何のために設置されているのかを確認する材料の一つになります。
ただし、道路工事による車線変更、一時的な規制、駐車車両、移動する人や自転車など、地図だけでは反映しにくい変化もあります。
そのため地図や測位情報は、周囲を直接見る代わりになるものではなく、センサーで得た情報を理解するための補助的な基盤として位置付けられます。
LiDAR、カメラ、地図、測位情報にはそれぞれ異なる限界と役割があり、状況に応じて必要な情報を確保することが、自動運転の設計では大切になります。
複数の情報を統合するセンサーフュージョンが判断の確かさを支える

自動運転では、ひとつのセンサーの情報だけで周囲を判断するのではなく、複数の検知結果を組み合わせるセンサーフュージョンが重要になります。
異なる見え方を照らし合わせることで、車両や歩行者などの存在、位置、動きについての判断材料を増やし、状況に応じた認知の確かさを高めるためです。
ただし、情報を単純に足し合わせればよいわけではなく、それぞれの信頼度や周囲の状況を考慮して扱う必要があります。
LiDAR・カメラ・ミリ波レーダーの長所を組み合わせる
センサーフュージョンでは、LiDAR、カメラ、ミリ波レーダーが取得した情報を、同じ対象物に関する情報として対応付けながら処理します。
たとえば前方にいる車両を捉える場合、LiDARからは位置や形状の手がかり、カメラからは車両らしさや表示の情報、ミリ波レーダーからは相対的な動きの情報を得られることがあります。
それぞれが得意とする情報を補い合うことで、対象物がどこにあり、何であり、どのように動いている可能性があるかを多面的に確認しやすくなります。
| 情報の組み合わせ | 統合時に活用しやすい内容 |
|---|---|
| LiDAR+カメラ | 立体的な位置や輪郭と、色・文字・模様などの見た目の情報 |
| カメラ+ミリ波レーダー | 対象物の種類を推定する手がかりと、近づく・遠ざかる動きの手がかり |
| LiDAR+ミリ波レーダー | 空間内の位置に関する情報と、移動状況に関する情報 |
| 3種類すべて | 対象物の位置・特徴・動きを複数の観点から確認するための材料 |
たとえばカメラが前方の物体を歩行者らしいと捉え、LiDARでも同じ位置に立体的な反応があり、ミリ波レーダーから移動の兆候が得られた場合、車両は複数の情報を基に対応を検討できます。
このように、各センサーの結果を相互に確かめる考え方が、単独の認知に偏らないための土台になります。
検知結果が食い違う場合は信頼度や周辺情報を基に処理する
実際の道路では、すべてのセンサーが常に同じ結果を返すとは限りません。
あるセンサーでは対象物を捉えていても、別のセンサーでは明確に捉えられない場面や、対象物の分類結果が一致しない場面も考えられます。
そこで車両のシステムは、各情報にどの程度の確からしさがあるかを示す信頼度を参考にしながら、統合後の認知結果を作ります。
-
検知された位置や動きが、直前までの情報と自然につながるかを確認します。
-
複数のセンサーが近い位置で同じ対象物を捉えているかを確認します。
-
対象物の大きさや移動の仕方が、推定された種類と大きく矛盾しないかを確認します。
-
道路形状や周囲の車両などの情報と照らし合わせ、判断材料の優先度を調整します。
たとえば一時的な反射や遮られ方によって、ひとつの検知結果だけが不自然に変化した場合でも、過去から継続して得られている情報や他のセンサーの結果を参照することで、急な判断を避ける工夫ができます。
反対に、複数の情報に不確かさが残る場合は、十分に確認できていない状況として慎重に扱うこともセンサーフュージョンの大切な役割です。
統合処理は「正解をひとつに決める」ためだけのものではなく、不確かさを把握したうえで走行判断につなげるための仕組みといえます。
冗長性を持たせて一部の不調を補う
複数のセンサーを搭載する理由のひとつに、冗長性を確保することがあります。
冗長性とは、ある情報源が利用しにくい状態になっても、別の情報源を使って周囲を把握しようとする考え方です。
たとえば汚れや一時的な視界の変化などで、特定のセンサーの情報が通常より使いにくくなった場合でも、ほかのセンサーの結果が走行判断の材料になることがあります。
ただし、複数のセンサーがあれば、どのような状態でも認知できるという意味ではありません。
同じ環境条件が複数のセンサーに影響する可能性や、統合に必要な情報が不足する可能性もあるためです。
そのため自動運転のシステムでは、各センサーの状態を確認し、必要に応じて利用する情報の重み付けを変えたり、より慎重な走行方針を選んだりする設計が求められます。
センサーフュージョンは、個々のセンサーを万能にする技術ではありません。
それでも、異なる角度から集めた情報を適切に扱うことで、周囲の変化を継続して捉えるための判断材料を厚くする仕組みとして、自動運転を支えています。
LiDARは構成部品と車載要件が価格や小型化の課題につながる

LiDARは、光を出して反射を受け取る部品に加え、広い範囲を測るための仕組みも必要になるため、車両への搭載にはコストや設置場所の課題があります。
さらに、走行中の振動や気温の変化に長く耐えられるよう設計する必要があり、単に小さくするだけでは十分ではありません。
高い測定精度と車載向けの耐久性を両立させることが、LiDARの低価格化・小型化で重要になるポイントです。
発光・受光部や走査機構に高い精度が求められる
LiDARは、レーザー光を発する発光部、反射光を捉える受光部、光を必要な方向へ向ける光学系などで構成されます。
対象物までの距離を測るには、光を出してから戻るまでのわずかな時間や、反射光の変化を精密に扱わなければなりません。
そのため、部品ごとの性能だけでなく、発光・受光・信号処理が安定して連携する設計が求められます。
遠くにある対象や反射の弱い対象まで捉えようとするほど、光学部品の調整、受光感度、不要な光の影響を抑える処理などが重要になります。
また、周囲を広く測るタイプでは、レーザー光の向きを変える走査機構も必要です。
走査の角度やタイミングにずれが生じると、取得した立体情報の精度に影響する可能性があるため、細かな制御と組み立て精度が欠かせません。
| 主な要素 | 役割 | 設計上のポイント |
|---|---|---|
| 発光部 | レーザー光を照射する | 出力の安定性と長期的な耐久性 |
| 受光部 | 反射して戻る光を検出する | 微弱な光を扱う感度とノイズ対策 |
| 光学系 | 光を整え、必要な方向へ導く | 位置ずれを抑える組み立て精度 |
| 走査機構 | 測定する方向を変える | 動作の安定性と耐久性 |
振動や温度変化に耐える車載設計が必要になる
車に載せる機器は、工場や室内で使う機器よりも厳しい環境に置かれます。
走行時の細かな振動、路面から伝わる衝撃、夏場の高温、冬場の低温、雨水やほこりなどを想定しなければなりません。
LiDARでは、光の通り道や部品の位置がわずかに変化するだけでも、測定結果に影響することがあります。
そのため、筐体の強度を高めるだけでなく、内部部品の固定方法、放熱、防水・防じん、電気的なノイズへの対策まで含めた設計が必要です。
小型化のために部品を詰め込むほど、熱を逃がしにくくなる場合がある点も、設計を難しくする理由のひとつです。
車体の外側に取り付ける場合は、汚れが付着しにくい形状や、表面を保護する工夫も検討されます。
回転式と半導体式では構造や特徴が異なる
LiDARには、装置の一部を回転させて広い範囲を測る回転式と、可動部分を減らした半導体式があります。
回転式は、レーザー光をさまざまな方向へ送りやすく、周囲を広く捉える構成を取りやすい方式です。
一方で、モーターなどの機械部品を用いる構造では、サイズ、重量、耐久性、組み立て工程が課題になることがあります。
半導体式は、半導体技術や小型の走査機構を活用して、可動部分を抑える方向で開発されている方式の総称です。
部品点数を減らしやすく、車体のデザインになじむ形へ小型化しやすい可能性があります。
ただし、半導体式と呼ばれるものにも複数の構造があり、測定範囲、解像度、量産のしやすさなどの特徴は一律ではありません。
- 回転式:広い範囲を測りやすい一方、機械構造を含む
- 半導体式:小型化を目指しやすい一方、方式ごとに性能の違いがある
量産化と技術開発によって小型化や低価格化が進められている
LiDARの価格を下げるには、単に部品を安価にするだけでなく、製造工程を標準化し、大量生産しやすい構造へ変えていくことが大切です。
近年は、発光部や受光部の集積化、光学部品の簡素化、可動部を減らす技術などを通じて、小型化と生産性の向上が進められています。
車両メーカーが搭載位置をあらかじめ考慮して車体を設計できれば、後から大きな装置を追加する場合より、収め方の選択肢も広がります。
ただし、求める測定性能、搭載台数、車種ごとの設計条件によって、実現できる価格やサイズは変わります。
LiDARは進化が続く技術なので、性能・耐久性・生産性のバランスを取りながら、車載しやすい形へ近づける取り組みが続いているといえるでしょう。
まとめ
この記事のポイントをまとめます。
- LiDARは対象物までの距離や立体的な形状を捉えやすいセンサーです。
- カメラは色・文字・模様を認識し、信号や標識、道路表示の読み取りを担います。
- 距離の把握はLiDARが得意ですが、カメラも画像解析によって距離情報を得られます。
- 夜間や逆光ではLiDARが比較的安定しやすい一方、雨・霧・雪は両方に影響します。
- ミリ波レーダーは、物体との相対速度を捉えやすく、悪天候時の情報も補います。
- LiDAR、カメラ、ミリ波レーダーは、それぞれ単独では捉えにくい状況があります。
- 複数のセンサー情報を組み合わせるセンサーフュージョンが、自動運転の判断を支えます。
- LiDARには価格、小型化、車載環境での耐久性といった課題もあります。
自動運転におけるLiDARとカメラは、どちらが優れているかを単純に比べるものではなく、得意な情報が異なる大切な組み合わせです。
周囲の形や距離を捉えるLiDARと、信号や標識の意味を読み取るカメラに加え、ミリ波レーダーなども活用され、車は多角的に道路状況を把握しようとしています。
それぞれの違いを知っておくと、自動運転に関するニュースや車選びの情報も、今までより理解しやすくなるはずです。
気になる車種や運転支援機能を調べるときは、搭載されているセンサーの種類だけでなく、どのような場面を想定しているのかにも目を向けてみてください。

